INTERVIEW
人と地球の架け橋として メディアとコミュニティができること【前編】人と地球の架け橋として メディアとコミュニティができること【前編】人と地球の架け橋として メディアとコミュニティができること【前編】人と地球の架け橋として メディアとコミュニティができること【前編】人と地球の架け橋として メディアとコミュニティができること【前編】人と地球の架け橋として メディアとコミュニティができること【前編】
加藤 佑
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人と地球の架け橋としてメディアとコミュニティができること【前編】
update 2023.01.24
# 働き方
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# サステナブル
# 環境
「人と地球のよりよい未来の作り方」において、サーキュラーエコノミー(循環型経済)への関心が増えている。サーキュラーエコノミーを実現させるために、企業、メディア、そして個人が求められていることはどんなことだろうか。
サステナビリティ・サーキュラーエコノミーを軸として教育・金融・ライフスタイル・旅行・ビジネスにいたるまで幅広い領域で様々なメディアを展開し、「人のココロをつなぐ架け橋になる」という思いが社名に込められたメディアカンパニーがある。
世界を変える可能性を秘めた最先端のテクノロジーから、人々の心を動かす広告やデザインといった世界中に散らばる素敵なアイデアを紹介するメディア「IDEAS FOR GOOD」をはじめ、サーキュラーエコノミーに関するオンラインプラットフォーム「Circular Economy Hub」の運営も手掛けるハーチ株式会社代表・加藤佑氏に未来を明るくするためのヒントを聞いた。
地球に寄り添う理想のメディア像
加藤 佑氏/ハーチ株式会社代表取締役代表 CEO
ー多彩なメディアを手掛けているハーチでは『Publishing a better future(よりよい未来をみんなに届ける)』というミッションを掲げられています。加藤さんの創業当初の思いはどういったものでしょうか?
加藤佑氏(以下、加藤) :僕たちは、メディア事業がメインなので「記事を書いて世の中に配信する」ことが主な仕事になります。その中で、記事をただ投稿(=publish)したいわけではなく、記事を通じて読者の方や取材に協力いただいた方、その先にある社会全体の未来をよりよくしていきたいと思っています。会社として毎月数百本の記事を投稿するので、数百回は社会をよりよくするチャンスがあると考えています。編集チームは記事を投稿する際、本当にその記事でみんなの未来がより良い方向へと変わっていくかを意識しながら仕事してほしいとの思いを込めて、『Publishing a better future』をミッションに掲げてます。Publicには「みんなが等しくアクセスできる」っていう意味があると思うので、よりよい未来をみんなのものにしていきたいという思いもあります。
ーその未来を見据えた上での、具体的な企業活動について教えてください。
加藤:運営メディアのうちいくつかをご紹介すると、一つは「IDEAS FOR GOOD」という、世界中の社会課題をクリエティブに解決している事例を集めているウェブマガジン。そして「Circular Economy Hub」というサーキュラーエコノミーを推進したい人のためのコミュニティでありプラットフォーム。また、僕の地元でもある横浜の地域に根付いた活動として「Circular Yokohama」という地域循環経済プラットフォームも展開しています。それらのメディアやコミュニティの強みを生かして企業や自治体、大学などとサスティナビリティやサーキュラーエコノミーを共同で推進・支援することをもう一つの事業として行っています。
「Ideas for good」Webサイト
ー ご自身から見て、どういうところがユニークな点だとお考えでしょうか。
加藤:弊社には海外在住のメンバーもいることもあり、元々、グローバルなネットワークを使った情報の提供には強みがあります。欧州の最新情報をきちんと仕入れ、日本向けに配信できる状況がある一方で、ローカルの泥臭い現場も見ることで、サーキュラーエコノミーやサスティナビリティに関する解像度が上がるなと思っています。その両方の軸を生かしながら、「Circular Economy Hub」のコミュ二ティの中で情報発信したり、メンバー同士で議論もしています。そうした「グローバル、サスティナビリティ、メディア」の3つを掛け合わせると、オンリーワンの強みを持てるかなと思っています。
ー 御社の場合、自分たちでコミュニティもやるだけでなく、ローカルでも実証しているのが特徴的な取り組みだと思います。
加藤:個人的な考えですが、メディアの在り方や役割も変わってきているなと思っていまして。プロジェクトに対して客観的に一定の距離をおく報道機関としての役割ももちろん必要なのですが、今はもっと現場に近づき、場合によっては現場の一員としてプレーしていく中でしか見えないようなレベルの課題や気付きがあります。
社内でもよく言うのですが、最近は「ゼロ次情報」として自分でやってみて、そこから得られる知見や知恵みたいなものまでリアリティを持って語れないと、本当の意味で情報発信としての価値は失われてしまうのではないかという危機感を持っています。メディアでありながら、プレーヤーでもあることで解像度を上げていく仕組みを作りたいと思っていて、例えばマルシェみたいなところで商品を仕入れて売ってみたりとか、リアル空間での活動も大事にしています。
横浜市内の駅前公園にて開催されたイベント「星天フェア2022 PLAY!! HOSHITEN!!」で店頭に立つ加藤さん
循環型社会を目指して見えてくる、幸せの本質とは
ー自分たちが体験することで、そのリアリティも、発信されたメッセージの伝わり方も違うというのはまさに聞いていて思いました。御社のビジョンや最終的なゴール感として「人と地球のより良い未来」を掲げていると思うのですが、一言でいうとどんな世界なのでしょうか?
加藤:会社としては、「誰もが自分の好きなこと、得意なことを活かして社会の役に立っていると実感できるような世の中」を作っていきたいと思っています。究極的には、社会貢献したいかしたくないかに関わらず、みんな等しく存在するだけでなにかに貢献してるのだと思います。ただ、それを本人がどう感じているかは別の問題です。人が幸せになるには、「自分がコミュニティの中で役に立っている、存在価値がある、誰かから感謝されている存在である」ということを実感できることが、すごく大事だと思います。
そういう意味では、社内でも一人一人が好きなことをやってほしいし、その人が好きなことをやった結果、会社の成果にもなるようなデザインについても常に考えています。一人一人が互いの強みと弱みを理解しながら、強みは活かしあい、弱みは愛しあい、みんなが幸せになれる社会を理想としている感じですね。
ー理想の世界と同じく、御社の中でも、個人の特徴を尊重した組織になっているんですね。
加藤:社内でブロックチェーンを使った「ピアボーナス」という制度があります。この人の仕事は良かったなと思ったり、何か感謝をするときに、毎月1000ポイントの持ち点から100ポイントずつ、好きな人に送れる仕組みを作りました。それを収益と連動させて、ポイント分を給料に反映することができます。なぜ実施したかというと、自分の強みや世の中の役に立っていることって、本人は気が付いてないことが多いですよね。それは周りが気付かせてくれることが多い。ピアボーナスを通じて、その人がみんなに貢献できる強みが分かっていくので「ギフト」という制度名にしています。ピアボーナスを送り合うことで、各自の持っているギフト、才能を見つけることがうまくできたらよいなと思っています。
ーそれはいい循環を生み出しそうな仕組みですね。サーキュラーエコノミーを社会で実現する上で、特にミッシングパーツとして足りていないところはどこでしょうか。
加藤:一般的な話でいうと、パートナーシップです。素材メーカーと最終品メーカーのパートナーシップ、メーカーとリサイクラーのパートナーシップなど、横のつながりを増やして協力していくこと。産官学民のつながりもそうですし、衣食住の垣根を超えた連携も大事です。やはり一社では循環は実現できないので、繋がりはとても大事だと思います。
サーキュラーエコノミー実現のためのシフトチェンジ
「Circular Yokohama」が開催した「ヨコハマサーキュラーフューチャーセッションズ」の模様
ー その場合、サーキュラーエコノミーの経済合理性についてはどうお考えですか?
加藤:循環型のシステムを実装していく上で、少なくとも短期的にはサーキュラーエコノミーはリニアエコノミーと比較して経済的合理性が低いというのが現状だと思います。もし経済合理性が高ければすでにみんな取り組んでいるはずです。誰かがどこかでコストを負担しなければいけないので、サーキュラーエコノミーの優位性をつくるために国が政策としてインセンティブを作っていく方法もあれば、企業がイノベーションによりコストを下げる、高付加価値な製品・サービスにすることで消費者に負担してもらうなどの方法もあると思います。
とにかく「コストをどうするのか問題」は絶対クリアしなければいけない。金融機関がこの移行コストを負担するような長期的なファイナンスの仕組みも必要だと思います。ただ、ファイナンスをする以上は投資対効果が見える必要があり、サーキュラリティの可視化なども重要になってくると思います。いずれにしても、どうコストの問題を乗り越えるかが大事だなと思いますね。
ー それぞれの考えるサーキュラーエコノミーの認識の違いもありますね。
加藤:サーキュラーエコノミーを成長のための競争戦略として捉えている人もいれば、サーキュラーエコノミーの向かう先はより地域に根差した分散型の経済社会システムだと考える人もいて、結構みんな定義が違います。違うことは良いことだと思うのですが、自分がどういう世界を描いているか、どの時間軸で見ているのかも合わせて丁寧にコミュニケーションしていかないと、お互いの前提が共有されないので議論しづらいこともあります。サーキュラーエコノミーを通じてどのような世界を実現したいのか、解像度を上げたコミュニケーションも大事だなと思います。
ー それを解決するには、どこから変える必要があるのでしょうか。
加藤:人間を物質として見てみれば、私たちが自然界の循環システムから逃れることは絶対にできません。経済や社会という概念は、言ってみれば私たちがコレクティブに描いている共同幻想ですよね。何かを変えるためには、この幻想を書き換えるのが一番早い方法なのではと思っています。
サーキュラーエコノミーにおいては、リデュース・リユース・リサイクルなど、「Re」の感覚が大事だと思っています。例えば、RespectのSpectは「見る」の意味なんですが、Reがつくと後ろを振り返るという表現になります。一度通り過ぎたけど、もう一回振り返るくらい価値があるというところからRespectは「尊敬する」という意味になっています。一方でビジネスの関連ワードは、ProduceやProjectなど、「前に進む=Pro」思考が多いですが、いますでにあるものの価値を見つめ直す「Re」の価値観へのシフトも大事ですよね。
ー 「Re」の視点だと、最近のビジネスパーソンのトレンドでもある「Reskiling」(学び直し)の視点が重なりますが、時代の必然の感じもします。それはメディアとコミュニティを同時に運営されているからこその気づきなのかもしれませんね。
加藤:そういう意味では教育がやはり大事ですよね。例えば、子どもは何かを作りたいときに、スーパーのゴミ置き場からダンボールをもらってきたりすることがあると思うのですが、子どもたちからすると「ゴミ」と「資源」との間に差がないんですよね。ちょうどよい素材がここにあった、みたいな感じで。私たちもこうした感覚を取り戻すことが必要だと実感しますね。自分たちが持っているものの価値をもう一回見つめ直して、「違う使い方ができないだろうかと」と捉え直す。そのように私たちの「眼差し」を変えていくことが大事なのではと思っています。
文/編集:荒井亮
写真:福森 翔一
ハーチ株式会社 代表取締役:加藤 佑
ハーチ株式会社 代表取締役:加藤 佑
2015年にハーチ株式会社を創業。社会をもっとよくする世界のアイデアマガジン「IDEAS FOR GOOD」、サーキュラーエコノミー専門メディア「Circular Economy Hub」、横浜のサーキュラーエコノミープラットフォーム「Circular Yokohama」など、サステナビリティ領域のデジタルメディアを運営するほか、企業・自治体・教育機関との連携によりサステナビリティ・サーキュラーエコノミー推進に従事。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。東京大学教育学部卒。
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