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社会の課題を、等身大に。 富士通デザインセンターが解きほぐす、自ら未来を変えるためのエコシステム社会の課題を、等身大に。 富士通デザインセンターが解きほぐす、自ら未来を変えるためのエコシステム社会の課題を、等身大に。 富士通デザインセンターが解きほぐす、自ら未来を変えるためのエコシステム社会の課題を、等身大に。 富士通デザインセンターが解きほぐす、自ら未来を変えるためのエコシステム社会の課題を、等身大に。 富士通デザインセンターが解きほぐす、自ら未来を変えるためのエコシステム社会の課題を、等身大に。 富士通デザインセンターが解きほぐす、自ら未来を変えるためのエコシステム

宇田 哲也

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社会の課題を、等身大に。
富士通デザインセンターが解きほぐす、自ら未来を変えるためのエコシステム
富士通株式会社 デザインセンター センター長宇田 哲也

社会の課題を、等身大に。富士通デザインセンターが解きほぐす、自ら未来を変えるためのエコシステム

update 2024.03.08

# コミュニティ

# NFT

# web3

# デザイン

# インタビュー

# フード

2019年9月に発表した経営方針において、「IT企業からDX企業への転換」を掲げデザイン経営に取り組む富士通株式会社。翌年、子会社の吸収合併で本社内に設立されたデザインセンターでは、経営層とともに社内へのデザイン思考の浸透を推進し、同社のマインド変革を牽引してきた。

方針転換以降の富士通は、デザイン思考のテキストブックやデザイン経営にまつわるレポートの無償公開など、企業の持つ知識や情報を社会で共有し合う文化づくりにも積極的に取り組み話題を呼んでいる。より複雑化する社会課題を捉え直し、企業の枠を超えたエコシステムの形成と、さまざまなプロジェクトを通した共創の実践の場を生み出し続けるデザインセンター。公式noteでの情報発信や、社会課題を読み解き組織を超えたつながりのハブとなるメディア「DESIGN SPECTACLES」の運営、未来への提案のきっかけを探索するプロジェクト「インスピラボ」の活動レポートなど、社会に向けた発信にもエネルギーを注いでいる。

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デザインセンター長である宇田哲也氏は、デザインセンター発足以来およそ200名のメンバーをリードしデザイン経営を推進してきた。Bipass編集長の後藤が宇田氏、そして「DESIGN SPECTACLES」の運営を担当するデザインセンター戦略企画部の渡邊ちはる氏にお会いし、デザインセンターの活動や目指す未来を伺った。

経済合理性だけではない価値をもたらす「デザイン思考」

—宇田さんは2020年に富士通に入社され、デザインセンターのセンター長に就任されました。まず、デザインセンターのミッションやビジョンについて教えてください。

宇田:富士通の経営層が求めていたのは、デザイン思考を社内に浸透させることでした。社員それぞれがクラフトマンシップを持ちながら、自分たちで価値をつくり外部に発信していく。それを自発的にできる人材を富士通の中につくっていくというものでした。私たちは、デザイン思考の伝道者としてまず自分たちでデザインを実践してみせることで、その考え方を社内に広げていきました。

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Bipass編集長/後藤友尋(左)、宇田哲也氏/富士通株式会社 デザインセンター センター長(右)。宇田氏は前職ではハードウェアのエンジニアであり、ソフトウェア関連のプロジェクトのマネージメントやDX推進事業などにも携わってきた。

—企業の中で組織に貢献する部分と、自分たちの挑戦していきたいこと。デザインセンターはそのバランスをうまく取りながら活動されているように感じます。現在は社会課題に取り組むプロジェクトが次々と生み出されていますが、その背景にはどのような考え方があるのでしょうか。

宇田:デザインセンター発足後の1〜2年は、かなり社内に意識を向けてデザインという価値をつくりだしてきましたが、次第に社員それぞれがデザイナーとして社会の課題に直接触れる・考える機会を持つべきだと思うようになりました。ビジネスユースとしてのデザインやデザイン思考はもちろん重要です。その上で、自然にその思考に辿り着ける人が増えると、企業の価値観も多様になるし、事業を人の暮らしに沿ったものに転換していけるという気づきも得られるでしょう。経済合理性だけではない価値があると考えています。

—そういう考え方はまだあまり多くの企業の中で浸透していませんが、すごく大事な思考だと感じます。デザイン思考のテキストブックの公開も含め、デザインセンターではとても先駆的な活動をしていますよね。

宇田:デザイン思考は主にビジネスの課題をどう解くかに重きを置いて、そのためのツールとして使われる場合が多い。でもその後ろには純粋にデザインというものがあり、そのデザインを理解すると、社会の中で商業用途だけではない役立ち方をします。テキストブックを公開したのは、業界や日本全体に共有する必要性を感じたからです。より良い社会をつくるのであれば、自分の所属する企業のためだけに貢献するという考えは早く捨てた方がいい。みんなが身軽になって、いい距離感でコミュニティをつくることができれば、もっと日本は良くなると思います。

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信念を持って立ち上げ等身大の目線で取り組む

—このメディア「Bipass」は資源の新しいルートを探るメディアとして、課題解決に向かっていく未来の仲間やプレイヤーに焦点を当てることを目的としています。そういう点で、富士通の枠を超えたハブというコンセプトを持つ「DESIGN SPECTACLES」とは通じる部分があると感じていました。媒体のコンセプトや目指すところを、メディアを担当されている渡邊さんからお聞きできればと思います。

渡邊:過去の富士通のデザイナーは、人間とテクノロジーをフラットにつないできた人たちだと思います。その功績をリスペクトしながら、私たちは「今ある社会課題」を考えていくという使命を持っています。デザインセンターのステートメントにも「等身大」や「あなたとわたし」というワードが出てくるのですが、人や社会を通して課題を“自分ごと化”できるように噛み砕いていくことに通じています。すごく遠いところにある大きな課題を解きほぐし、自分の頭で考えてアクションにできるような身近なものにしていく。そこはデザイナーが力を発揮できるところだと思っています。

—確かに世界や社会の課題は思いついても、そこにどう自分が個人としてコミットできるかはピンとこない人が多そうです。

渡邊:メディアを一つの切り口として、デザイナーのアイデンティティを活かし、なるべく易しい問いかけにしてみんなで語り合える場をつくろうと考えました。それが「DESIGN SPECTACLES」の始まりです。自分たちがリスペクトできる活動や人を取り上げ、自分たちの本当に向き合いたい課題に挑戦するプロジェクトを立ち上げ、実践する場にしたい。そしてそれに共感してくれた人とつながって仲間になっていく、そういうプラットフォームになればと考えています。

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渡邊ちはる氏/富士通株式会社 デザインセンター 戦略企画部

—等身大で理解しやすいという「DESIGN SPECTACLES」の特徴は、まさにデザインセンターだからこそですね。活動に引き込まれる、参加したくなるというデザインの力を感じていました。

宇田:ただやっぱり世の中では企業の利益に貢献していればそれでいいという考え方は根強く、エコシステムやコミュニティの必要性を説明するのは難しいと感じます。「課題が複雑化しているからこそ、みんなで力を合わせて解決に向かう」という表面的な説明はできますが、まだ十分には理解が広がっていない。だからこそデザインも含めて考え方を共有資産としていかないと、日本の企業の存在価値が薄くなっていってしまうのではと思っています。

—そのきっかけとして、富士通という大企業が知識を公開したり、会社の利益のためだけではないプロジェクトを手がけたりすることの意義はすごく大きいですよね。具体的に、社会課題にまつわるプロジェクトにはどのようなものがあるでしょうか。

宇田:例えば2022年から新潟県佐渡島の住民の方々と進めていた「課題探索共創プロジェクト」では、佐渡市の少子高齢化や人口減少という課題の解決につながる施策として、地元の高校生を主人公としたレストランのプロジェクト「Gachiコミュニティレストラン」をデザインしました。受容性が高く共創しやすい“食”をテーマに、佐渡市の高校やレストラン、デザイナーやエンジニア、大学教員など様々な領域の方たちを巻き込んだプロジェクトとなり、深くて広いエコシステムができあがったと思います。

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—このプロジェクトもやはり、ビジネス的な成功とは距離を置いたところにゴールを置かれていたんでしょうか?

宇田:ほかのプロジェクトもそうですが、最初から精緻なビジネスモデルを描いて立ち上げたわけではなく、様々な偶然が重なって生み出されたものです。自分がやるべきだと信念を持って動く人がいると、その信念に吸い寄せられるような人が現れる。そうすると急に雪だるま式に膨らんで、プロジェクトが一気に広がっていきます。最初は小さな玉でも、とにかくたくさん転がして旗を振っていく。その中からスケールしたものをピックアップすればいいと考えています。

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日本酒×音楽×web3? 三芳菊酒造とのコラボレーション

—徳島県三好市の三芳菊酒造とコラボレーションしている、ユニークな日本酒の取り組みがあるともお聞きしてます。なんでも、音楽を聴かせてできあがった日本酒だとか・・・?

宇田:三芳菊×富士通デザインセンターの日本酒プロジェクトですね。徳島県三好市にある三芳菊酒造は、これまでも加振器音響システムで醸造タンクを振動させ発酵を促進させた日本酒をつくるなど、新たな取り組みに積極的に挑戦してきた老舗の酒蔵です。デザインセンターでは三芳菊酒造とタッグを組んで、徳島県や日本酒業界を取り巻く課題を捉え直し、ユーザー参加型の日本酒製造体験をデザインしました。ユーザーはスマホを活用して、遠地から醸造タンクに音楽を聴かせることで味や風味に変化を与える体験をすることができます。音楽を聴かせてできあがったお酒と聴かせなかったお酒の飲み比べで体験をより深く楽しみ、コミュニケーションも生み出せるという、新たな体験価値の提案をしています。

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—Web3的な、ファンコミュニティを形成していく要素もあるのでしょうか?

宇田:まさに、Web3のテクノロジーを組み合わせ、仮想通貨とNFTでお酒づくりの体験に参加できるような仕組みをつくっています。スマホで操作すると自分の好きな音楽を醸造タンクに流すことができるというアプリを2024年3月8日にリリースし、世界中どこからでも参画できるプラットフォームを目指しています。今後は、地域に密着した音楽を用いたお酒づくりやコミュニティに参加した人が実際に徳島に行けるアクションを用意したいので、地域活性に取り組む方やツーリズムの分野の方と組んでみたいとも構想しています。

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—お酒造りがコミュニティのプラットフォームになっているような印象ですね。

宇田:コミュニティのメンバーが愛着を持ちながら自分たちでお酒を育てていき、製造の過程から完成までをオープンにしていき、“みんなでつくる”をコンセプトとしたエコシステムになることをことを目指しています。

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消費者参加型でつくった加振酒「SAKEWAVEFES」。ジャンルの異なる4曲の楽曲を三芳菊酒造のSNSで公開し、フォロワーは好きな曲を投票。得票率に応じて各楽曲を再生した酒づくりを行い、作ったお酒を実際に味わえるようにAmazonで販売した。

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ラベルのQRコードを読み取ると、AR画像と共に醸造中に聴かせていた音楽にアクセスできる。

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小型スピーカー内臓のボトルチェーン。音楽を流しながら醸造中の雰囲気と一緒にお酒を味わうことができる。

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音楽を聴かせたお酒と聴かせていないお酒の飲み比べは、感想を言い合ったりアイデアを出し合ったりとコミュニケーションも弾む。

—かなり拡張性と熱量を感じるプロジェクトですが、取り組みを続けたからこその社内の追い風も影響しているのでしょうか?

宇田:そうですね、プロジェクトの盛り上がりによって富士通という企業体質が変化してきたことが対外的な印象につながったり、社内で今まで関わりがなかったような人同志が話すきっかけになったりもしているようです。そしてプロジェクトの話を聞いて、エコシステムに参画したいといってくださる外の企業の方も増えています。

—活動による企業としてのメリットが目に見える形で現れている。

宇田:はい、こうした活動が会社の中でなぜ認められているかというと、経営層とのコミュニケーションの密度を上げて、富士通の事業に対するデザインの貢献度を定量的に表現して説明できているということもあると思います。報告の際に利用しているデザインの価値の定量化はデザイン白書として社外にも公開しています。どのプロジェクトもデザインセンターのメンバーみんなが、組織とその先の社会に貢献したいという思いを本気で持ちながら取り組んでいる。富士通の仕事も広がり産業にも貢献でき、エコシステムとして未来の体験が展開されていく。こうした一連の流れをもっと広げていきたいですね。

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—ダイセルは「愛せる未来、創造中。」というタグラインを掲げて、誰もが愛せる持続可能な未来を目指しているのですが、宇田さんが考える「愛せる未来」を教えてください。

宇田:自分でも変えていける未来、ということかなと思います。どんなに現状を変えていきたいと思っても声が届かなかったり、自分たちで動かせる感覚が持てなかったりすると、どう足掻いてもこの巨大な社会は変化しないんだという諦めが生まれてしまう。若者の政治への無関心と似ているのかもしれませんが、そんなムードが今の日本には漂っている気がします。ただ少なくとも今僕がいる場所や周りでは、自分の力で社会や世界を変えることができると本気で信じられる環境をつくりたいし、そんな組織や社会が当たり前になることが“愛せる未来”なんだと思います。僕自身も無力感に苦しんでいた時期があるので、今は「自分たちで変えていくんだ」という声を少しでも拾って、その声を挙げてくれた人に変化の実感を還元していきたいですね。

富士通のデザイン(企業サイト)
富士通のデザイン(公式note)
DESIGN SPECTACLES

文:野村 智子/写真:福森 翔一

宇田 哲也

富士通株式会社 デザインセンター センター長宇田 哲也

富士通株式会社 デザインセンター センター長宇田 哲也

1996年大阪大学通信工学専攻卒業後、日系大手企業に入社。海外市場向け光通信事業の研究開発を経て、エンジニア兼アーキテクトとして国内外の通信キャリア向けビジネスに従事。2015年から同社のシリコンバレー拠点に出向し、自組織と事業のデジタルトランスフォーメーションを推進。同社のグローバルビジネス拡大に大きく貢献。 2020年1月より富士通株式会社に入社。デジタルソリューションサービス事業部を経て、2020年4月より現職。デザインを生業としてこなかった経歴でのデザイン組織長就任は、社内外から大きな注目を集めた。現在、デザインを活用した同社の事業・組織改革に取り組むほか、オープンエコシステムによる社会課題解決プロジェクトにも携わる。

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