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共感がコルクから連鎖する。 TOKYO CORK PROJECTが描く 資源活用の未来共感がコルクから連鎖する。 TOKYO CORK PROJECTが描く 資源活用の未来共感がコルクから連鎖する。 TOKYO CORK PROJECTが描く 資源活用の未来共感がコルクから連鎖する。 TOKYO CORK PROJECTが描く 資源活用の未来共感がコルクから連鎖する。 TOKYO CORK PROJECTが描く 資源活用の未来共感がコルクから連鎖する。 TOKYO CORK PROJECTが描く 資源活用の未来

北村 真吾

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共感がコルクから連鎖する。
TOKYO CORK PROJECTが描く
資源活用の未来
株式会社GOOD DEAL COMPANY代表取締役北村 真吾

共感がコルクから連鎖する。TOKYO CORK PROJECTが描く資源活用の未来

update 2025.04.09

# 廃棄

# プロダクト

# コミュニティ

# 建築

# 資源

# サステナブル

# フード

祝いの席でワインのコルク栓を開ける音。ポンッと弾ける軽快な響きとともに、これから始まる楽しい時間を告げる。しかし役目を終えたコルク栓は、多くの場合そのまま捨てられてしまう。

あまり知られていないが、コルクは圧縮しても丈夫で、空気を含み熱を通しにくいなど、優れた特性を持つ素材だ。そんな価値を見つめ直し、廃棄されるコルクを回収し、建材やプロダクトとして再生させる——それが「TOKYO CORK PROJECT」の取り組みだ。

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飲食店に設置されるコルク回収ボックス

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使用済みコルクが再生素材とプロダクトとして生まれ変わる

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回収したコルクを適切に再生加工し、新たな素材や独自のプロダクトとして蘇らせるTOKYO CORK PROJECT。国内で年間2,000トン以上が廃棄されるコルク栓を有効活用できれば、消費の場である都市が「資源の宝庫」にもなり得る。限りある資源を最大限に活かせば、未来の姿も変わるはずだ。

2010年にこの取り組みを始めたのは、GOOD DEAL COMPANY代表の北村真吾さん。飲食店で目の当たりにしたフードロスの多さに対し、何かできることはないかと模索するなかで、同じ想いを持つ仲間が集まった。日々の生活にさりげなく添えられる、コルクから生まれたプロダクトたちは、私たちの暮らしを見つめ直すきっかけになるかもしれない。北村さんが歩んだ15年、そして彼の想いに共感した人々と目指す未来について話を聞いた。

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インタビューはコルク回収に協力するレストラン「フィリップ・ミル 東京」で行った

不動産業界から転身、飲食の現場で知った廃棄の姿

—— 北村さんのバックグラウンドについて教えてください。

北村真吾氏(以下、北村):大学は理工学部の機械工学科に進みましたが、次第に自動車のエクステリアなど、感覚的なものに興味を持つようになりました。卒業後もエンジニアとして働くイメージが湧かず、直接人を喜ばせる仕事がしたいと思い、飲食業界に関心を持ちました。将来自分の店を持つときに役立つかもしれないと考え、不動産デベロッパーに就職したのが最初のキャリアです。しかし、利益優先で建物を壊していく業界の慣習に馴染めず、1年半ほどで退職しました。汚染された土を想像のできない廃棄をする話も聞かされました。

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北村真吾氏/GOOD DEAL COMPANY 代表

北村:社会人向けのカフェ開業コースに通っていたこともあり、退職後は飲食業界へ入りました。新宿三丁目の繁盛店で、ホール業務からバーテンダーまでしっかり経験しましたね。お客さんが喜ぶ姿を直接見られるのは楽しかったですが、同時にフードロスの多さにも衝撃を受けました。売り上げが伸びるほど廃棄される食材も増えていく状況に、もやもやした違和感を覚えました。

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聞き手の後藤友尋/Bipass編集長

—— 憧れの飲食業界で、どうしても生まれてしまう廃棄を目の当たりにしたのですね。

北村:そんな中で目に留まったのが、コルクでした。大人数でのパーティでは一晩で20〜30本ほどのボトルが空きますが、このお店では1ヶ月に1,000個近いコルクが溜まっていた。ただ捨てるには惜しい素材だと感じました。ちょうど2010年ごろは、立ち飲みワインバーのような業態が増えてきた時期でもあるので、うまく連携すればポジティブな取り組みになると考えました。

今になって振り返ると、幼い頃から収集癖がありました。おもちゃのカードを集めたり、同じものを揃えたりするのが好きだったんです。また、コルク製のマットや積み木に触れた記憶もあり、その素材の温かみを幼心に感じていたように思います。

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北村:リサーチを進めると、アメリカではすでに似たような取り組みがあり、イタリアやベルギーの一部でもコルクの回収が行われていることがわかりました。そこで、自分が働いていた新宿周辺の飲食店30軒ほどに直接足を運び、協力を呼びかけてみました。不動産業界で培った飛び込み営業の経験が、意外な形で活きたかもしれません(笑)。すでにコルクを額縁や箸置きとして再利用している店もあり、リサイクルのアイデアにも前向きな反応をもらえたことで、プロジェクトを本格的に始動する決意が固まりました。

コルクの特性を活かしたプロダクトづくり

——「TOKYO CORK PROJECT」について改めて紹介いただけますか?

北村:飲食店や小売店にコルクの回収ボックスを設置し、物流業者と連携しながら定期的に集めています。回収したコルクには金具などが付いていることもあるため、就労支援施設に協力いただき、種類ごとに分類したのち洗浄。粒状に粉砕したコルクを圧縮してブロックやボード、シートなど加工しやすい形状へと固形化することで、再び暮らしの中で活用できる素材へと生まれ変わらせています。

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コルク回収専用ボックス

—— 回収したコルクはさまざまなプロダクトに生まれ変わっていますよね。その用途の広さに驚きました。

北村:コルクは優秀な素材なんです。軽くて弾力があり、発泡スチロールのような多孔質構造を持っているため、断熱性や遮音性に優れている。水や薬品への耐性も高く、100年以上海底に沈んでいたシャンパンが、開封後も問題なく飲めたという逸話もあるほどです。この特性を生かし、断熱材として工業製品や航空宇宙分野でも活躍しているんですよ。

また、素材となるコルク樫を伐採するのではなく、樹皮を剥いで作るものなので、枯渇資源にもなりにくい。コルク樫の寿命は大体200〜300年くらいで、地域資源の保護や砂漠化の防止につながるサステナブルな素材なんです。

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天然栓と圧縮栓、シャンパン用の栓で材質が異なるため、再生素材が均一になるように分類を行っている。

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床を傷つけず思いっきり遊べる「TOKYO CORK BRICK」/コルクの台座が滑り止めになる「BUDDY BOWL (POTTERY)」

—— 軽くて柔らかく、それでいて丈夫。適度な摩擦があるからこそ、さまざまなプロダクトに展開できるのですね。古くから使われている素材でも、改めて深掘りすると、新たな価値が見えてくることが興味深いです。

北村:プロジェクトを始めた当初は、再生や製品化を行う加工業者探しに苦労しました。ワインの流通量は増え続けていますが、プラスチックの普及によって、コルクを加工する需要は相対的に縮小していたのだと思います。小規模ながらも地道にプロダクトを作り続け、2013年ごろから展示会にも出展しましたが、最初のうちはなかなか広がりませんでした。

転機となったのは、新型コロナウイルスの流行でした。大量消費前提の産業構造が一時的にスローダウンし、SDGsの影響もあり世界的に環境保護に対する関心が高まりましたよね。「本当に大切なものは何か?」を見つめ直す人が増え、私たちのプロジェクトに声が届くようになったんです。コルクを通じたソーシャルアクションに共鳴する方が増えたのは嬉しかったですね。

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A4/エーヨン(合同会社オフィスキャンプ)とコラボレーションした、再生コルクを利用した積み木「tsumi-ishi」

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千葉県の複合施設「KURKKU FIELDS(クルックフィールズ)」の地中図書館に再生コルク素材が採用された

レストランとも呼応する、食を取り巻く想いの可視化

—— コルクの回収と再資源化にはパートナーの存在が欠かせません。コルクの回収拠点として参加している「フィリップ・ミル 東京」から、支配人の中田さんにお越しいただきました。プロジェクトに参加したきっかけや、その後の変化を教えていただけますか?

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「フィリップ・ミル 東京」支配人の中田敦弘氏

中田敦弘氏(以下、中田):2020年11月ごろ、会社としてのサステナブルな取り組みを模索していた社員のひとりが、メールで北村さんに問い合わせたことがきっかけです。運営会社である(株)ひらまつは、フランス料理イタリア料理を中心としたレストランを展開しており、外食産業のなかでも多くワインを提供する業態ですので、何かポジティブなことに取り組みたいという想いがありました。

プロジェクトに参加してからも、それまで廃棄していたコルクを回収ボックスに入れるだけなので、オペレーションが増えることもなく、サステナブルな取り組みに協力できている印象です。今ではひらまつの複数のレストラン、カフェ、ホテルなど、多くの場所でプロジェクトに参加しており、回収したコルクが生まれ変わる過程をお客様向けに展示したお店もあります。

北村:コルクの回収がお店に興味を持つきっかけになっていたら嬉しいです。飲食店の方々からは、コルクを活用したコースターやシートなど、新しいアイデアをいただくこともあります。回収を通じて意見交換や相談ができるのもありがたいですね。

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——中田さんにお持ちいただいた、こちらのオブジェはどういうものでしょうか?

中田:わたしたちのレストランを監修しているフィリップ・ミル シェフが年に数回来日する機会があるのですが、その際にシェフがフランスから持ってきた、シャンパンのミュズレー(栓を抑える金具)を集めて作ったオブジェです。若手料理人のコンクールで記念品として贈呈したり、思い出の食事で開けたシャンパンを取り入れたりして、メモリアルなオブジェとして親しまれています。実は、この店舗でもすべてのテーブルに置いているものなんですよ。

北村:とても素敵ですね。会話が生まれるきっかけにもなりそうです。回収したコルクから作るプロダクトにも、こうしたストーリー性を持たせていきたいですね。

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中田:私たちは「美しい味を、未来へ。」というパーパスを掲げています。生産者の方々をはじめ多くの人が関わって一皿ができ、それを召し上がったお客様に笑顔になっていただきたい。ただ、「おいしい料理とワインを提供する」だけでなく、食に関わる全ての土地や人々に敬意を払い、その素晴らしさを目の前のお客様と共有し、未来に繋げていきたいと思っています。

北村:強く同意します。ワインも生産者が土や木と対話を重ね、自然と一体になって生み出し、楽しい食の場を盛り上げてくれるもの。最初から最後まで、一つひとつのものにエモーショナルな価値を込められれば、共感してくれる人も増えるのではないでしょうか。

—— 食事を作る人、運ぶ人、味わう人、そしてリサイクルに携わる人。多くの関係者が関わるプロセスを、コルクやミュズレーを通じて可視化できれば、食の時間はさらに豊かなものになりそうです。

資源回収で人をつなぎ、地球に視野を向けていく

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——プロジェクトでは今後、どのようなことを目指していくのでしょうか?

北村:コルク回収のネットワークをさらに拡大していきたいです。日本では年間2,000トンのコルクが廃棄されていますが、現在の回収量は関東を中心とした6〜7トンにとどまっています。これを100倍の30%まで引き上げることを目指しており、そのためには少なくとも50,000拠点が必要になります。

また、回収したコルクの活用先も、公園や道路の舗装など、より公共性の高いものへと広げていきたいと考えています。コルクは安全性が高く環境にも優しい素材ですし、回収に協力してくださった方々が、その善意がどのように活かされているのかを実感できる形にしていきたいですね。

—— 資源循環が目に見える形になれば、より身近に感じられそうです。

北村:こうした目標を達成するためには、多様なパートナーの存在が不可欠です。飲食店や物流業者の皆さんはもちろん、プロダクトに付加価値を生み出すデザイナー、情報を発信するメディアの協力も必要です。表面的な取り組みではなく、コルクの価値や意義に共感していただいた上で、一緒に長く続く仕組みを作っていきたいですね。

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—— ダイセルは「愛せる未来、創造中。」というタグラインで誰もが愛せる未来を描いています。北村さんにとっての愛せる未来はどのようなものでしょうか?

北村:誰もが心地よく過ごせる未来です。「できる・できない」という二元論で競争するのではなく、それぞれが自分に合った役割を見つけ、活躍できる環境が理想ですよね。

また、環境問題やこれからの発展を考えるとき、人間社会だけでなく、動物を含めた生態系全体への視野が欠かせません。僕がこのプロジェクトに関わっているのも、小学生の頃に見た、環境汚染で苦しむ動物たちの映像がきっかけでした。リアルなコミュニケーションを大切にしながら、人と人とのつながりを深めつつ、地球規模での視野を広げていきたいと考えています。

TEXT:Yoshihiro Asano/PHOTO:Shoichi Fukumori

TOKYO CORK PROJECT
https://tokyocorkproject.jp/

GOOD DEAL COMPANY
https://gooddealcompany.tokyo/

北村 真吾

株式会社GOOD DEAL COMPANY代表取締役北村 真吾

株式会社GOOD DEAL COMPANY代表取締役北村 真吾

1983年生まれ。茨城県出身。マンションデベロッパーに就職、用地売買から販売までを一貫して担う。カフェ経営に興味を持ち独立スクールに通ったのち、会社を辞め繁盛店でノウハウを学ぶ。日々の仕事や暮らしの中にある大量の廃棄物とフードロスに疑問を持ったことから、環境トレードオフを小さくしながら暮らしを豊かにする事業として「TOKYO CORK PROJECT」を2010年にスタートし、2014年に株式会社GOOD DEAL COMPANYを設立。また、自治体と共同したフードロスへの取り組みやアーティストが使用した楽器の一部をリユースした商品のプロデュースを行う。

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