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“活き人”を繋ぎ 未来のイノベーションへ紡ぐ、 グランストーリーの物語“活き人”を繋ぎ 未来のイノベーションへ紡ぐ、 グランストーリーの物語“活き人”を繋ぎ 未来のイノベーションへ紡ぐ、 グランストーリーの物語“活き人”を繋ぎ 未来のイノベーションへ紡ぐ、 グランストーリーの物語“活き人”を繋ぎ 未来のイノベーションへ紡ぐ、 グランストーリーの物語“活き人”を繋ぎ 未来のイノベーションへ紡ぐ、 グランストーリーの物語

越智 敬之

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“活き人”を繋ぎ
未来のイノベーションへ紡ぐ、
グランストーリーの物語
株式会社グランストーリー 代表取締役CEO越智 敬之

“活き人”を繋ぎ未来のイノベーションへ紡ぐ、グランストーリーの物語

update 2024.10.23

# ビジネス

# コミュニティ

# ライフスタイル

# キャリア

# ローカル

「意志ある人の可能性を解き放ち、新たな価値を生み出すプラットフォームをつくる」をミッションに掲げ、次世代の共創エコシステム「STORIUM」を提供する株式会社グランストーリー。起業家や投資家、スタートアップや大企業の情熱溢れる「活き人」をつなげることで、日本の産業におけるイノベーションを加速させています。スタートアップと事業会社が連携し、イノベーションを増やし続けるために必要な要素とは何か。グランストーリー代表取締役CEOの越智敬之氏にお話を伺いました。

ネット黎明期と震災を経て模索した人生と仕事

―まず、これまでの経緯についてお伺いしたいです。越智さんがグランストーリーを立ち上げるまでの経歴についてお話していただけますか?

越智:1974年に神戸で生まれ、中学まで育ちました。その後、1999年に早稲田大学在学中の仲間たちとWEB制作会社を立ち上げたのが最初のキャリアでした。新しいことやクリエイティブな作業に没頭する性格で、インターネットが世界中の情報と自由な表現を結びつけ、急速に広がっていく様子にワクワクしていました。気づけば自然とWEB業界に馴染んでいたのです。

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越智 敬之 氏/グランストーリー代表取締役CEO

―インターネットが浸透する時代の波に乗って起業されたんですね。

越智:はい。あの時代は、ビジネス経験がない若手でも、WEB技術やクリエイティブトレンドに少しでも精通していれば、案件を受注できました。最初の頃は、仕事をもらえるだけで嬉しくて、全力でクリエイティブワークに取り組んでいましたが、1年半ほど経つと成長の実感が薄れ、より広く深くインターネットビジネスを学びたくなりました。27歳の時に、すべての運用案件を手放し、サイバーエージェントに中途入社しました。

当時のサイバーエージェントは、現在ほどの規模や知名度はなかったものの、若くてエネルギッシュな人材が集まり、熱心に事業をつくって育てる、そんな熱い会社でした。インターネット黎明期に新しい産業が生まれる瞬間を最前線で体感できたことは、非常に幸運だったと思います。

―サイバーエージェント時代に経験したその大きなブレイクスルーは、現在のグランストーリーの事業にも通じているのでしょうか?

越智:サイバーエージェントでは、主にマーケティングコミュニケーションの分野で、既存産業にインターネットの可能性を伝える役割を担っていました。生活者の心を動かすブランド戦略やクリエイティブ戦略、メディア企画やPRを駆使する活動は、今の活動にも息づいています。テクノロジーとアイデアを組み合わせ、着想を形にしていくプロセスを楽しむことは、今も私の生き方の一部です。

グランストーリーで展開しているSTORIUM事業も、企業同士がつながる情報ネットワークの仕組みを提供しています。サイバーエージェント時代に、さまざまな業界のクライアントとクロスボーダーでビジネスをしてきた経験が非常に役立っています。

―その後、越智さんは2013年よりAOI Pro.にてデジタルクリエイティブ部門の戦略立案と組織再編、2015年よりIDOM Inc.にて新規事業開発とオープンイノベーションの推進とキャリアを変遷されています。順調に拡大し続けるサイバーエージェントという組織から卒業した理由はなんだったのでしょう?

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後藤友尋/Bipass編集長

越智:きっかけは、2011年の福島の震災でした。私は神戸の震災を経験していて、3.11の時、その記憶がフラッシュバックしました。同時に、自分の仕事が社会や生活者にどう影響を与えているのか、実感しづらいことに違和感を感じるようになったのです。クリックやコンバージョンのデータが積み上がっても、社会と繋がっている実感がない。その違和感が強まり、次第に自分はどんな価値を社会に提供できるのかを模索するようになりました。

―AOI Pro.やIDOM Incで組織やチームそのものの再設計や編成を手掛けられたのも、より“体感を伴ったリアルな仕事や人”と向き合いたいという思いからでしょうか?

越智:そうですね。リアルな仕事や人と向き合う中で、組織や環境が与える心理的効果に興味を持ち、人が人らしく躍動できる環境を広めることに使命感を抱くようになりました。

人は社会的な存在であり、環境が一人の人生に与える影響は、時に決定的なものとなります。だからこそ、組織やチームを率いるリーダーは、自分たちがつくる環境が、個々の行動原理にどのように作用するかを考えることが重要だと思います。また、誰しも「誰かの役に立ちたい」「挑戦して成長したい」という根源的な欲求を持っていますが、組織やシステムの枠組みの中で、その欲求を諦めたり抑制してしまうことがあります。私は、この呪縛を解き、人やチームの可能性を引き出す手助けやきっかけをつくることをずっと考えてきました。AOI Pro.で子会社の組織改革に取り組んだ時も、IDOMで新規事業や次世代リーダー育成に関わった際にも、働く人たちの可能性が解き放たれる組織とチームを描くことが、私の働くモチベーションでした。

次世代にインパクトを与える「活き人」を増やす

―新産業創造プラットフォーム「STORIUM」運営、次世代リーダー育成プログラム「IGNITION」など、能力や領域を越境させて繋がりを加速させる事業を多く手掛けられていますが、グランストーリーの起業のきっかけはなんだったのでしょう?

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越智:「活き人」という言葉が、グランストーリーの存在を示す重要なキーワードです。この「活き人」が、今の日本社会には圧倒的に足りていないのです。「活き人」とは、自分のあるべき姿を考え、高い熱量で人々を巻き込みながら、制約を乗り越え行動し続けられる人のことを指します。こうした資質を持ったリーダーがもっと増えなければ、日本社会をリフレーミングすることはできません。日本の産業や地域を活性化し、次世代に活力と希望に溢れる未来を託すために、株式会社グランストーリーは生まれました。

―実際に手掛けられている事業の具体例についても教えてもらえますか?

越智:「活き人」を増やすというミッションのもと、2020年にスタートアップ経営者、大企業の新規事業担当者、若手リーダーを対象とした開発プログラム「IGNITION」を立ち上げました。IGNITIONは、セルフマネジメント、講師との対話、演劇を活用したシアターワークなど、フィジカルなコミュニケーション環境で自分と向き合い、内発的動機を引き出すことで行動変容を促すプログラムです。参加者の「心のOS」をアップデートすることを目指しています。

さらに、この「活き人」のコミュニティを横に繋げていくために、新産業創造プラットフォーム「STORIUM」を立ち上げました。このプラットフォームは、スタートアップ、投資家、大企業をクロスボーダーで包摂し、共創を促進する場となっています。

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STORIUM サービスコンセプト図

―「活き人」のイメージについてもう少し深掘りしたいです。自律的に思考できる人、行動できる人というのはイメージとしてはわかるのですが、具体的にどのような「活き人」が増えると産業や社会がポジティブになっていくと思いますか?

越智:未来や次世代に意識と行動が向いている人だと思います。もちろん、現在の生活や目の前の環境を大切にすることは前提ですが、先人たちから次の世代へと橋渡しをする役割を担い、「今、自分たちに何ができるか」を問い、探求し続ける人が「活き人」だと思います。

また日本人は、空気やニュアンスを読み取り、思いやりや慎みを大切にすることが美徳とされていますが、プロセスに偏りすぎて、手段と目的が入れ替わってしまうことが多いと感じています。また、評価やKPI、ルールやガバナンスといった制約が多く存在します。

だからこそ、それらの制約を打ち破り、イノベーションを巻き起こすためには、「活き人」同士がつながり、チームとして協力し合うことが重要です。そのためにこそ、STORIUMのようなイノベーションネットワークが必要なのです。

―「活き人」のパターンも一つじゃないというか、多様性のある「活き人」同士が繋がってチームになった時にこそ生まれる化学反応もありそうですね。

越智:そうですね、仲間の力はとても重要です。「いけいけ、もっとやれ!」と後押しする人もいれば、「本当にこれでいいのか?もっと別の方法があるのでは?」と批判的に考える人も必要。どちらのタイプも、フラットに集まれる環境や構造が大事です。また、「活き人」に出会ったら、自然とその人を他の人に紹介したくなるし、つなげたくなります。気持ちが入るからこそ、どうしても応援したくなるのです。

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―すごくわかりますし、このメディア「Bipass」の活動にも通ずる部分もあります。

越智:新規事業を作り出そうとするイノベーターや、大企業の中で仕組みを変えようと奮闘する人たちは、しばしば批判に晒されることがあります。もっと自然にお互いを助け合いながら、組織や社会をより良くしていくカルチャーが根付いて、競争から共創へのパラダイムシフトが世の中全体に起こればいいなと思っています。

だからこそ、私たちができることは、プラットフォーマーとしての中立性を活かし、的確なマッチングソリューションを提供して、少しでもオープンイノベーションの成功確率を高めることです。また、スタートアップの立場に立つと、大企業にはスタートアップが100年かけても得られない豊富なアセットがある。それを活用し、スタートアップのアントレプレナーシップやテクノロジーと連携すれば、イノベーションの社会実装の数やスピードは飛躍的に向上します。

そういった信念を胸に、イノベーションを起こそうとしている人々が出会い、仲間になれる環境づくりに、推し活のような心意気で日々取り組んでいます。

―一方で、「STORIUM」のプロジェクトをさらに推し進める上で、足りないピースやさらに強化したい領域もあるのでしょうか?

越智:現在の「STORIUM」には、約450社のスタートアップ、85社の大企業やCVC、さらにトップティアのベンチャーキャピタル(VC)約80社が集まっており、新産業創造を実現するネットワークとして国内屈指の規模になっています。ただ、今後さらに登録企業の共創と成長を支援していくためには、企業間のマッチングにおいて、より広範で深いソリューションが必要だと感じています。

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STORIUMの機能・特長

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STORIUMの画面イメージ

― 会社やフェーズによって何が足りないかは各社で異なってくるので、そこを補い合う、強化し合うような仕組みがあると良さそうですね。

越智:そうですね。その際、中立的なリコメンダーが存在することが非常に重要です。たとえば、課題を抱えるA社と、その課題を解決できる優秀なB社があった場合、B社から直接A社にアプローチすると、営業のように見られてしまい、価値が正しく伝わらないことがあります。そこに私たちのような第三者が介在することで、「こういう会社がありますよ、興味があればご紹介します」と中立的に伝えられるのです。私たちのようなサードパーティーが情報商社として、課題を認識し、適切に繋ぐ役割を果たせば、課題とソリューションが高確率でマッチングします。結果として、旧態依然とした営業活動を強いられる人が減り、ビジネスの再現性も上がり、需要と供給のバランスも整っていきます。

― さっき話されていた「推し活」がまさに近い感覚です。信頼できる人からの自然な伝わり方や届け方が入り口になることで、手前味噌な印象や不要な工数が割愛できる。

越智:そうですね。スタートアップ、投資家、大企業の間でニーズとステージが一致していることが事前にわかっていれば、プロジェクトは迅速に進展します。「STORIUM」のプラットフォームに情報を蓄積することで、双方の状況や優先順位を把握し、無駄なミスマッチを未然に防ぐことができるんです。たとえば、1時間の商談で、会社紹介に30分使うのは無駄です。そのような必要な情報は事前に「STORIUM」でキャッチアップできるため、より精度の高い商談が可能になります。

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地域にこそ拡張するべきイノベーション・ネットワーク

― 今後の展望についてお聞きしたいのですが、これから挑戦したいことや新たに考えているプロジェクトがあれば教えてください。

越智:注力すべきは「地域」です。東京にはスタートアップ、投資家、大企業が集まり、横のつながりも一定数充足していますが、地域に目を向けると状況は大きく異なります。たとえば、私の地元である関西でも、投資家がほとんどいない地域があります。東京の起業家の多くは地方出身ですが、ビジネスを成功させるために「東京に来ざるを得ない」状況になっています。

― Bipassを運営する私たちダイセルも、バイオマスをはじめとした地域資源を活用する研究をしています。地域には自然資源がたくさんあり、それを活用したいと思っている人もいる。でも、そのために誰と出会うべきか、どこに行けばその人に会えるのかが不透明なため、実際はいるはずの「活き人」が東京に比べて見えづらくなってしまっているというイシューはローカルにありそうです。

越智:そうですね。「会うこと」だけでなく「繋がり続けること」の基礎インフラが圧倒的に不足しています。今のところ、Facebookで友達になる程度のことしかできていません。

だからこそ、これからはSTORIUMに集まるソーシャルキャピタルを、地域の起業家やイノベーターの皆さんにもっと届けることに注力したいと思っています。起業家の皆さんが生まれ育った地域で、健やかに事業に取り組める環境が整うことが当たり前になることを目指しています。

― 最後の質問です、越智さんにとっての「愛せる未来」とはなんでしょうか?

越智:グランストーリーのビジョンそのものですが、「次世代に活力と希望に満ちた豊かな未来をつなぐ」ことです。日本が抱える多くの課題は、自己肯定感の低さに起因していると思います。成功の反対は失敗ではなく、諦めることです。諦めないために必要なのが、希望と活力です。「やってみよう!」「できそうじゃないか?」という前向きな声が行き交う未来が理想です。

そのような前向きなイノベーション創造を楽しむ「活き人」が集まり、互助共助のネットワークを構築することで、STORIUMが次世代のインフラとしてさらに発展していけるよう、引き続き精進してまいります。

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株式会社グランストーリー 公式HP
https://grand-story.jp/

写真:福森翔一

越智 敬之

株式会社グランストーリー 代表取締役CEO越智 敬之

株式会社グランストーリー 代表取締役CEO越智 敬之

兵庫県神戸市出身。阪神淡路大震災で実家が被災した際、家族の安否がわからない経験を通じて、情報インフラによるつながりの重要性を痛感。1999年、早稲田大学在学中にWEB制作会社を創業した後、2002年よりサイバーエージェントにてデジタルマーケティングやデジタルビジネスの普及発展に寄与。2013年よりAOI Pro.にて、デジタルクリエイティブ部門の戦略立案と組織再編を主導。2015年よりIDOM Inc.にて新規事業開発とオープンイノベーションの推進、次世代リーダーの採用と育成を担当。2019年、次世代リーダーによるソーシャルイノベーション支援を目的に、株式会社グランストーリーを創業。次世代リーダー「活き人」への行動変容プログラム「IGNITION」をリリースした後、2021年に次世代イノベーションを牽引するスタートアップとイノベーターのつながりを支援する共創エコシステム「STORIUM」をリリース。

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