INTERVIEW
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サステナブル・ブランド国際会議 2023
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トランスフォーメーションのための革新的なビジネスモデルとは?
update 2023.03.21
# 新素材
# リサイクル
# サーキュラーエコノミー
# サステナブル
# 環境
# 資源
2023年2月14日・15日、「第7回サステナブル・ブランド国際会議 2023 東京・丸の内」が東京国際フォーラム、丸ビルホール、JPタワーの会場とオンライン配信で開催された。
サステナブル・ブランドは、2006年に米国で誕生した持続可能性がテーマのグローバルコミュニティ。「サステナビリティ」をブランド(経営や理念、製品・サービスなど)の基盤に据えて競争力やブランド価値を高め、持続可能な未来の実現を目指している。日本では2016年から活動を開始し、情報発信やイベント開催などを行っている。
今回のテーマは「RECENTER & ACCELERATE」。持続可能な未来の実現には、築いてきた技術や経験を用いながら他と連携して加速させることが重要として、既に取り組みを進めている企業の基調講演やパネルディスカッション、展示などが行われた。
ダイセルからは、2月14日に行われた「トランスフォーメーションのための革新的なビジネスモデル」のパネルディスカッションに、事業創出本部本部長/バイオマスイノベーションセンター長の六田 充輝氏が登壇。サステナビリティと自社成長を両立させる変革の取り組みや、その実現に欠かせないイノベーションを生み出し続けるエコシステムについてディスカッションが行われた。
パネルディスカッションは東京国際フォーラムのD7ホールで実施。左から順に、山吹氏、寺崎氏、堀内氏、六田氏。
【パネリスト】
寺崎 康介
MS&ADインターリスク総研株式会社
リスクマネジメント第三部 サステナビリティ第一グループ グループ長・上席研究員
堀内 康隆
ブックオフグループホールディングス株式会社
代表取締役社長
六田 充輝
株式会社ダイセル
執行役員 事業創出本部 本部長/バイオマスイノベーションセンター長
【ファシリテーター】
山吹 善彦
サンメッセ株式会社/サンメッセ総合研究所 副所長
サステナビリティと成長の両立、3社の取り組みとは
近年、注目されつつある「サステナビリティ・トランスフォーメーション」(以下、SX)。SXは、経済産業省が2022年に再整理した定義では、『社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを「同期化」させていくこと、及びそのために必要な経営・事業変革(トランスフォーメーション)』を指す。
パネルディスカッションではまず、会社紹介と共に業態の異なる3社が取り組んでいるSXと、ベースとなるイノベーション事例などについて語られた。
気候変動、自然界のリスクを分析・評価し提供するー MS&ADインターリスク総研
寺崎 康介氏/MS&ADインターリスク総研株式会社 リスクマネジメント第三部 サステナビリティ第一グループ グループ長・上席研究員
損害保険会社のグループ会社で、リスクコンサルティング事業を担うMS&ADインターリスク総研の寺崎氏からは、同社がSXとして取組む2つの事例紹介があった。
2017年に出された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言を受け、近年、世界的に気候変動のリスク・機会を経営戦略に織り込み、定量化して情報開示することが求められている。
その中で、同社が取り組んでいる事例の1つ目は、河川洪水や高潮、干ばつなどの気候変動によるリスクを評価するサービス。米ベンチャー企業のJupiter Intelligenceと連携し、気温が4℃上昇した場合の浸水リスクなど、将来シナリオにもとづいて定量的に分析・評価を行い、情報提供している。
2021年には、TCFDに続き、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)が発足。自然資本や生物多様性に関するリスク・機会の情報開示を求める動きがある。今後は、自然による企業経営への影響と、企業が自然にどう影響を与えるかについて情報開示が求められ、その加速が見込まれている。
2つ目の取り組みはその流れを受け、自然関連にどう影響を与えるかについて、エリアの生物多様性を分析しリスク評価するサービスの開発。開発にあたっては、琉球大学発のベンチャーであるシンク・ネイチャーと連携し、同社の生物多様性AIを活用している。
説明の中で寺崎氏は、気候変動などに関する情報開示は「もはやコーポレートガバナンスコードで、少なくともプライム上場企業にとっては要求事項になっている」と語った。
既存店舗を超えたリユース機会の拡張と、さらなる挑戦ー ブックオフグループホールディングス
堀内 康隆氏/ブックオフグループホールディングス株式会社 代表取締役社長
「BOOKOFF」などの事業を手がけるブックオフグループホールディングスの堀内氏からは、リユースを軸とした取り組みと、挑戦中の事業について紹介があった。
本の再販売から始まった同社は現在、家電や衣料、日用品などと取扱い範囲を広げている。一方で、社会的にリユース・リサイクル意識が高まる中でも、使わなくなったモノを販売した経験がある人は日本全国で約4割。まだ機会の提供が足りていないという。
そうした中で同社は、BOOKOFFの店舗には馴染みがない層の来店機会を増やすため、百貨店へ出店。より多くの人へリユース機会を提供する取り組みを行っている。
取り組みは、海外にも広げている。日本国内で1年間に買い取る品物は現在、約4億点。約7割は再販売につながるが、売れ残る品もある。従来、国内の売れ残り品は廃棄していたが、現在、それを購買需要のある海外で再販売する事業を展開している。展開先の1つであるマレーシアでは、約9割が再販売につながっている。
「使い終わったモノを受け止めてモノの寿命を伸ばす、価値につなげる活動」を行っているという堀内氏。さらにパートナーと連携して、リサイクル事業や、忘れ物などリユース業界だけでないモノが集まる場所への事業展開の検討を進めていると語った。
天然由来の最古のプラスチック、セルロイドを軸としたモノづくりー ダイセル
六田 充輝/株式会社ダイセル 執行役員 事業創出本部 本部長/バイオマスイノベーションセンター長
ダイセルの六田氏からは、祖業の主軸事業であり、天然由来のプラスチック・セルロイドの概要と、これまでの会社の歩みを説明した。
セルロイドの原料は、木材や綿花から得られるセルロース(植物繊維素)とクスノキの抽出成分である樟脳(しょうのう)。最古のプラスチックとも呼ばれる。石油系樹脂よりも透明度が高く、眼鏡のフレームやディスプレイのフィルムなどに使われている。
セルロイド生成プロセスの概要。
日本の台湾統治時代に、セルロイド製造会社が各社バラバラに進めていたクスノキ伐採を計画的に行うため、8社が合併して設立されたのが大日本セルロイド、今のダイセルだ。
現在では、メディカル・ヘルスケアから、デバイスや半導体関連素材を扱うスマート、エンジニアリングプラスチックに至るまで、広く事業展開している。
ダイセルグループの主な事業体制。大きく5つの事業を展開している。
素材メーカーとして現在、技術面でのサステナビリティを展開。従来燃やすしかなかった素材を活かす技術の開発や、セルロースをもとにCO2を一酸化炭素のような有用物質に変える技術の研究など、ケミカルリサイクルにも取り組んでいる。
セッションの中で六田氏は、スタートラインは天然由来のセルロース・セルロイドであり、それが今もなおダイセルのモノづくりのベースにあると伝えた。
SXを支えるエコシステム、回すために必要なこと
SXを真に実現するためには、イノベーションが欠かせない。ただイノベーションを可能にするためには、自前主義ではなく、企業同士または産学官の連携が重要となる。
2つ目の議題として、継続的なイノベーション、付加価値創出につながるエコシステムの構築について、その取り組みが語られた。
リサイクルという新たな価値創出のため連携、ポイントは志の共有
堀内氏/ブックオフグループホールディングス株式会社
ブックオフホールディングスは現在、買い取って再販売するリユースだけでなく、資源化して新たな価値を生み出すリサイクルにも取り組んでいる。リサイクルしているのは、本とCD/DVDだ。
売れ残ってしまった本は、日本製紙の協力を得て資源化し、プライベートブランドでドリルを制作して提供。CD/DVDは、伊藤忠プラスチックスと多摩美術大学と連携し、「CD・プラ」という再生プラスチック素材を開発している。
リサイクルは、1社では成しえなかったという堀内氏。また連携する上で必要なポイントは、個々の会社が利することよりも、最終的に「何を目指し実現していくのか、志を同じくすることが重要」と語った。
需要が拡がるサステナビリティ分野、連携と人の育成が必須
寺崎 氏/MS&ADインターリスク総研株式会社
堀内氏と同じく、連携には共通目的と志の共有が重要という寺崎氏。イノベーションを持続させるためにはさらに、広く協力関係を構築することと、サステナビリティ人財の育成が必要と語った。
特に、今後求められる自然分野は気候以上に範囲が広く、生物多様性だけでなく、水資源、土壌、防災など多岐にわたる。そのため1社のソリューションではカバーしきれない部分が発生する。
そこでMS&ADインターリスク総研は22年11月、三井住友フィナンシャルグループと業務提携し、ソリューションを持つ企業や研究機関などを集めて、課題解決を目指すコンソーシアムを設立している。
またサステナビリティ分野の需要増加に伴い、企業や研究室での専門人材が不足している現状について言及。寺崎氏は今後、社会全体でサステナビリティを加速させる人財の育成が必要と述べた。
連携の輪を回すために、社会全体でバトンをつなぐ
「Biomass Value Chain」 のイメージ。
持続的なイノベーションや加速を実現するには、自前主義でなく企業やアカデミア、官との連携と、志の共有が必要。その共通認識のもと、六田氏が語ったのは、社会全体で「Biomass Value Chain(バイオマスバリューチェーン)」を回すこと。
資源をつくり、素材化し、モノをつくり、販売する。使用後は正しく捨てて、再度資源化する。そのサイクルを回すためには、それぞれが役割を果たしバトンを渡していく必要がある。企業連携や産学連携もその流れの1つと位置づけた。また連携にあたっては、互いに補完し合いながら進めるという、信頼関係の醸成が欠かせないと述べた。
ダイセルが担う技術サイドの役割としては、保有技術を活用してリサイクルを促し、新しい価値を生み出して、エコノミーとエコロジーの両立させるサポートをすることと語った。
「新バイオマスプロダクトツリー 」のイメージ。
最後に、バイオマスを用いた資源循環型社会の実現を目指す「新バイオマスプロダクトツリー」のプロセス概要を説明。新バイオマスプロダクトツリーは、ダイセルの技術を用いた価値創造の取り組みだ。
木材を溶かしセルロースを抽出する工程を見直して新たな製品を生み出したり、セルロースを反応させた土壌汚染への活用、ダイヤモンドを用いたCO2の有用化など。プロダクトツリーを改めて見直すことで、新たな価値創造ができるという可能性を提示した。
なお新バイオマスプロダクトツリーによる価値創造にあたっては、現在、素材研究・用途探索・製品開発・社会実装を同じ志で取り組む共創パートナーを募集中で、可能性の拡大を目指している。
セルロースを活用した環境保全の取り組みイメージ。
セッションの中では、セルロースが古着や紙から得られるため、服から服ではない、全く新しいプラスアルファの価値を生み出せることにも言及。堀内氏より、化学的なアプローチで価値を高められることについて前向きなコメントが寄せられた。
異なる業態でSXを推進する3社が登壇したパネルディスカッション
明らかになったのは、SXにつながるイノベーションを起こすために、企業間や官民学の連携がこれまで以上に求められていること。持続可能な社会の実現という、世界規模の課題に対しては、既存の枠にとらわれない発想・アプローチが欠かせない。
また連携による効果を生み出すためには、サステナブルな社会を実現するという大きな目的と志を互いに持ち続け、それぞれが役割を果たして、社会にバトンをつないでいく必要がある。
ダイセルのブースで展示された酢酸セルロースの加工品。
ダイセルのブースで展示されたバイオマスモールド。
会場には多数の来場者が訪れた。
イベント情報
第7回サステナブル・ブランド国際会議 2023 東京・丸の内
会期:2023年2月14日(火)・15日(水)※2日間開催
会場:東京国際フォーラム・丸ビルホール・JPタワーホール&カンファレンス + Online
参加者数:約5,500名
開催内容:セッション、ワークショップ、ネットワーキング企画 など
参加費:有料(事前登録制)
主催:株式会社博展・Sustainable Life Media, Inc.(本社:米国)
特別協力:公益財団法人東京観光財団
協賛:スポンサー・パートナー企業各社
TEXT:三部 朗
REPORT:サステナブル・ブランド国際会議 2023
REPORT:サステナブル・ブランド国際会議 2023
第7回サステナブル・ブランド国際会議 2023 東京・丸の内/会期:2023年2月14日(火)・15日(水)※2日間開催/会場:東京国際フォーラム・丸ビルホール・JPタワーホール&カンファレンス + Online/参加者数:約5,500名/開催内容:セッション、ワークショップ、ネットワーキング企画など/参加費:有料(事前登録制)/主催:株式会社博展・Sustainable Life Media, Inc.(本社:米国)/特別協力:公益財団法人東京観光財団/協賛:スポンサー・パートナー企業各社
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