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ゴミから次の物語を。 fabulaが変革する廃棄食材の未来【前編】ゴミから次の物語を。 fabulaが変革する廃棄食材の未来【前編】ゴミから次の物語を。 fabulaが変革する廃棄食材の未来【前編】ゴミから次の物語を。 fabulaが変革する廃棄食材の未来【前編】ゴミから次の物語を。 fabulaが変革する廃棄食材の未来【前編】ゴミから次の物語を。 fabulaが変革する廃棄食材の未来【前編】

町田 紘太

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ゴミから次の物語を。
fabulaが変革する廃棄食材の未来【前編】
fabula 株式会社 代表取締役CEO町田 紘太

ゴミから次の物語を。fabulaが変革する廃棄食材の未来【前編】

update 2023.01.24

# 新素材

# リサイクル

# サーキュラーエコノミー

# サステナブル

# 環境

# フード

# 資源

fabula(ファーブラ)株式会社」は小学校からの幼馴染3人で2021年10月にスタートした東京大学発ベンチャーだ。東京大学生産技術研究所酒井(雄)研究室にて開発された「100%食品廃棄物から作る新素材」をコア技術として、あらゆるゴミの価値化を目指している。

fabulaは、規格外の野菜や加⼯時に出る端材、廃棄される生ゴミなど、⾷品廃棄物から新素材をつくる技術を持つ。⾷品廃棄物を乾燥させ粉末状にし、⾦型に⼊れて熱圧縮するという⾮常にシンプルな方法ながら、乾燥⽅法や粉末の粒度、成型時の温度により無数の⾊やテクスチャー・⾹りなどの特徴を⽣み出すことができる。

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ラテン語で「ストーリー」を意味する「fabula」。ゴミを新たな資源へと生まれ変わらせるこの技術で、どのような未来を描いているのか。拠点である東京大学生産技術研究所を訪問し、fabula代表・町⽥紘太氏に話を伺った。

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100%自然由来、廃棄食材からつくられる新素材とは?

ー2022年12月からスタートした「Bipass(バイパス)」は、創業100年を超える化学メーカーである株式会社ダイセルが新たにはじめたメディアです。バイオマス(生物資源)をキーワードに、この先の社会に求められる資源のあり方を企業や分野の枠を超えてディスカッションし、アイデアの種を生み出していくことを目的としています。

「ゴミから感動をつくる」というビジョンを掲げているfabulaですが、まず現在の活動内容と技術について聞かせていただけますか?

町⽥紘太氏(以下、町田):2021年10月に会社を立ち上げ、様々な事業者様と協業しながら少しずつ廃棄食材を原料としたプロダクトができ始めている段階です。2022年3月にはクラウドファンディングを実施し、リターン品として廃棄物からつくったお皿やコースターを展開しました。今はテーブルウェアや椅子、雑貨類にもチャレンジしています。

ーfabulaの技術は100%⾃然由来で生ゴミを新素材に変換できるというものですが、元の原料となった野菜や果物などの香りや質感が残るという点も非常にユニークですよね。どんな食材ゴミがこの技術の対象になるのでしょうか?

町⽥:基本的に人が口にするような食材は全て対象となります。今まで試したのは、みかんなどの柑橘類の皮、規格外の野菜、コーヒーかすや抽出した後のお茶の葉、コンビニ弁当などですね。

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ー具体的にどのような技術で、食品ゴミを新素材につくり変えているのでしょうか?

町⽥:原料となる食品ゴミを乾燥・粉砕した後に、金型に粉末を入れて熱と圧力を加えて成形します。ホットプレスのようなものですね。温度と圧力が成形時の基本的なパラメーターとなっており、この二つを調整することであらゆる廃棄食材を理想の形に成形することができます。素材ごとの成形の条件をデータ化することで、違う原料からも同じ素材をつくることが可能となります。最終的なプロダクトのテクスチャーや粒の粗さは、製造の工程でコントロールしています。

ーこの素材からすでにお皿や椅子をつくられているとのことでしたが、最終的にどんなプロダクトへの転換を目指している技術なのでしょうか?

町⽥:金型があるものであればどんなプロダクトでも製造可能ですが、将来的には建材として提供したいという思いがスタートからあります。⽩菜の廃棄物でつくった素材はコンクリートの約4倍の曲げ強度を持たせることができ、厚さ5mmで30kgの荷重に耐えることができるので、コンクリートの代替品となる可能性を持つ技術です。

ー生ゴミがすごい強度の素材に。童話の「お菓子の家」みたいなものが実現できる可能性がありますね。

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町⽥:使用する⾷材によって強度は異なってくるのですが、⾼強度の⾷材を混ぜ合わせるなどカスタマイズも可能です。また、2025年の大阪・関西万博のある一角の建材使用のお話もいただいており、そこに向けた実装にも取り組んでいます。

ー万博は大きなアピールの場になりそうですね。一方で、大規模な建築素材として使用する要件を法的にクリアするのは、なかなか大変そうにも感じますが…。

町田:そうですね。実装のための要件をクリアするためのきっかけづくりに万博がなれば嬉しいですね。

コンクリートの研究から行き着いた、食品ゴミの未来

ー町田さんは元々、東京大学生産技術研究所でコンクリートを研究されていたと伺っています。そこから会社を設立したのはかなり思い切った意志だと想像しますが、きっかけはあったのでしょうか。

町田:学生時代はコンクリートのリサイクルや、持続可能な新しい建材の開発といった研究室の大きなテーマの中で、「食べられる建材」というのが僕の研究テーマでした。研究のアウトプットがビジネスになるのかどうかはその時点では考えてはいませんでしたが、シンプルに面白そうだなと。可能性も感じましたし、社会実装までを自分で手がけてみたいと思ったのがきっかけですね。

ー「食べられる」というのは聞いただけでキャッチーだし妄想が広がりますよね。ゴミといってもいろいろな素材がある中で、なぜ廃棄食材を使ってみようと考えたのでしょうか。

町田:コンクリートって建材の中でとてもネガティブで悪者なイメージを持たれることが多いんですよね。ただ、僕が学んでいた東京大学生産技術研究所の酒井雄也准教授は、「建材にもっと親しみを持ってもらいたい」と常々言っていました。そんな先生の思いと、僕自身が持っていた環境問題への興味が結びついて、地球にやさしい素材を建材にできないかと研究し始めました。進めていくうちに、新たな天然資源を採掘するより廃棄されたモノを再利用した方が環境にも人間にも良いと気づき、生活に身近なところで排出される廃棄食材に着目するようになりました。

ー食材が建材になるという循環の振り幅がありながら、シンプルかつ感覚的な魅力があるのがこの技術の魅力だと思います。この素材は、人が食べて口にしても問題ないものなのでしょうか?

町田:法律面でクリアしなければいけない点が多々あるので、「食べられる建材です」という売り出し方はまだできないですが、食べようと思えば食べられる、という段階ですね。

ーそこがクリアできると本当に夢がありますよね。ちなみに研究の過程で食べてみて一番おいしかった原料はなんでしょうか?

町田:個人差はあると思いますが、マンゴーの皮が美味しかったですね。

ー味がするということは、当然香りもするわけですよね。

町田:はい、食パンからつくれば食パンの香りがしますし、カレーパンからつくればカレーの香りがします。

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食パンの廃棄ゴミからつくられた、fabulaの新素材。

ー食べるまではいかなくとも、香りを活かした空間づくりや製品づくりに幅広い用途がありそうですね。やはりつくりたての香りが一番強いのでしょうか?

町田:香りは、できたてが最高です(笑)。おっしゃる通り、食品として商品化するのは難しいのですが、素材ごとに匂い付けやテクスチャーが生まれるのがこの素材のユニークなところなので、いろいろな文脈で食品ゴミをリサイクルして社会実装することができると考えています。

リサイクルの先に想像するべき消費者

ー開発の際は、原料となるゴミの素材ありきでユースケースを考えているのでしょうか?それとも、はじめに消費者目線で考えて、素材となる原料を探しているのでしょうか?

町田:現段階では、ゴミを出してしまう事業者や消費者の悩みに答えるのがスタートになっているケースが多い気がします。ただ、一見ただのゴミだけど、見る人が見たら魅力的な原料になるというケースも結構あるので、ゴミそのものにも常日頃からアンテナは張っています。別の原料と組み合わせたらこういう素材ができるのでは、こういう使い方ができるのでは、という見方もあります。

ー「消費者を想像する」のは当たり前のことですが、プロダクトアウトに没頭してしまうと意外と抜けてしまう視点だと思います。サステナブルな意識が世の中に浸透する一方で、使い勝手が置き去りの「リサイクルさえすればOK」みたいな考え方も散見されますよね。

町田:紙ストローなんかも議論されがちですよね。確かに、質はいまいちだけどリサイクルされることに価値があるわけだから我慢しようよ、みたいな風潮には疑問があります。ただ、僕としては消費者が選べる選択肢があればあるほど豊かなのかなと思うので、そこを広げる努力をしていきたいです。

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ー社会への想像力を働かせてモノづくりを進めていくときに、自分の思考の範囲だと限界もあると思うのですが、発想を広げるためにしていることはありますか?

町田:僕自身はクリエイティビティが高いわけではないしですし、まだ経験値もそこまで蓄積できてはいないのですが、開発の過程で様々な業種の方と出会えるのは大きい刺激ですね。fabulaに興味を持っていただける方は、農家から食品会社、ゼネコンまでかなり幅広いんです。ずっとコンクリートの研究だけをしていたらありえなかったことで、食品工場に白衣で入っていくような体験はおそらくできなかった。会社の持つ技術を「食べられる」という一点だけで押し出していないおかげか、いい意味で「ゴミのなんでも屋さん」だと認識してもらうことが多いです。「農場で出たゴミをそのまま農業用資材に代替できないか」という相談をいただいたり、「このゴミ、どうにかならないですか」という声を投げかけられることで、僕らも幅広いアクションができるようになっています。

ー多種多様な場所に足を運んで相談を受け、お題に適したアウトプットを考え続ける体験は想像力が高まりそうです。今後、この技術でどういった未来や社会をつくりたいのか、ビジョンや夢について教えてください。

町田:先ほどもユースケースのお話がありましたが、今の世の中の静脈産業(使用済み製品を回収して再生利用する産業)発のプロダクトの多くは、エンドユーザーに届けることを想定したモノづくりがあまりできていない印象があります。例えばイチゴなら、最後にケーキを食べる消費者を想像しながら育てたりしますよね。でも静脈産業の場合、リサイクルした後の製品がどういう使われ方をしてどこに行き着くのかが不透明な印象です。fabulaでは、「ゴミから感動をつくる」というミッションを掲げています。「廃棄物」ではなく「ゴミ」という言葉を選んだのは、「ゴミ」が一番フラットで値付けされていない言葉だからです。イチゴの例でいうと、食べた後に残った“ヘタ”や余って廃棄されたものを、再度プロダクトや資源に生まれ変わらせることで、そのゴミに新しい未来の用途を産むことができる。静脈産業全般に対して、その先の価値を生むモノづくりを投げかけていきたいですね。

インタビュー後編はこちら

文/編集:松岡 真吾
写真:福森 翔一

町田 紘太

fabula 株式会社 代表取締役CEO町田 紘太

fabula 株式会社 代表取締役CEO町田 紘太

1992年生まれ。2021年10月に小学校からの幼馴染3人で、fabula(ファーブラ)株式会社を設立。幼少期をオランダで過ごし、環境問題に興味を持つ。世界約60ヵ国以上を旅行。東京大学生産技術研究所酒井(雄)研究室にて、卒業研究として新素材を開発。現在も新素材に関する研究を進め、fabula株式会社の代表取締役を務める。

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