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対話と共創のきっかけを。 Bipass「サーキュラーダイアグラム」プロジェクト始動対話と共創のきっかけを。 Bipass「サーキュラーダイアグラム」プロジェクト始動対話と共創のきっかけを。 Bipass「サーキュラーダイアグラム」プロジェクト始動対話と共創のきっかけを。 Bipass「サーキュラーダイアグラム」プロジェクト始動対話と共創のきっかけを。 Bipass「サーキュラーダイアグラム」プロジェクト始動対話と共創のきっかけを。 Bipass「サーキュラーダイアグラム」プロジェクト始動

グループ対談

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対話と共創のきっかけを。
Bipass「サーキュラーダイアグラム」プロジェクト始動
造形構想株式会社峯村 昇吾
SUNDRED株式会社吉井 拓史
TIS株式会社/クリエイティブディレクター伊藤 淳
TIS株式会社神﨑美央

対話と共創のきっかけを。Bipass「サーキュラーダイアグラム」プロジェクト始動

update 2024.08.09

# 山林

# ローカル

# 研究

# 教育

# コミュニティ

2024年3月にBipassで取材した、造形構想株式会社の峯村昇吾氏による「ファッション産業のサーキュラーダイアグラム」。複雑に重なり合う産業構造を俯瞰し、大量生産・大量消費・大量廃棄という一方通行の社会構造から、循環型の社会へと移行するための手掛かりとなるダイアグラムだ。

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峯村昇吾氏が発表した「ファッション産業のサーキュラーダイアグラム」(2022年公開)

この取材に端を発し、サーキュラーダイアグラムの森林資源版をつくるべくプロジェクトが立ち上がった。資源の新しいルートを探るメディアであるBipassが、これまでに出会ってきた森林資源における様々な分野の課題や取り組み、ビジネスなどを含めた産業全体の構造が捉えられるとしたら……。見えていなかったつながりが浮かび上がり、課題の所在を把握し共有することができ、持続可能な社会に向けて各々が新たな一歩を踏み出すことができるのではないだろうか。

オンラインなどでミーティングを重ね動き出した森林資源のサーキュラーダイアグラムプロジェクト。2024年6月、埼玉県秩父郡横瀬町にあるサウナ付き一棟貸し宿「ocomori」でプロジェクトミーティングが行われた。Bipass編集長・後藤友尋の声かけにより集まったのは、峯村氏のほか、TIS株式会社の伊藤淳氏と神﨑美央氏、SUNDRED株式会社の吉井拓史氏という、いずれもサステナブルな未来に向けて取り組み続けるメンバーたちだ。

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左から吉井 拓史/SUNDRED株式会社、神﨑美央/TIS株式会社、後藤 友尋/Bipass編集長、伊藤 淳/TIS株式会社、峯村 昇吾/造形構想株式会社

バリューチェーン全体を捉えるためのサーキュラーダイアグラム

 ミーティングの会場となったocomoriは、地域の森林資源でつくられたサウナを併設する一棟貸し宿だ。TIS株式会社が企画提案した、ITの力と地域の森林資源を活かしたプログラム「WOOD DREAM DECK」の最初のプロジェクトとして、横瀬町との官民連携により2023年に完成した。WOOD DREAM DECKの合言葉は「『したいこと』から、考えよう。」。窓の外には緑が溢れ、鳥たちの鳴き声に包まれたocomori。森林資源を考えるプロジェクトのミーティングにぴったりなロケーションで、メンバーたちが集まった。

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ocomori周辺の森で摘んだクロモジとカキドオシの葉にお湯を注いでお茶に。身の回りの豊かな自然をいただきながらミーティング。

ミーティングに先立ち、Bipass編集長 後藤から改めてプロジェクトの経緯の共有があった。

「僕たちは素材の会社ですが、これからは目の前のお客さんに商品を届けるためのサプライチェーンではなく、バリューチェーン全体を捉えて共創していく必要があると考えています。それでBipassというメディアを通じて様々な分野で興味深いアプローチをされている方を取材しながら共創の仲間づくりをしてきました。そんな中で峯村さんのサーキュラーダイアグラムにものすごく共感したんです。森林資源を取り巻く業界全体が俯瞰できるサーキュラーダイアグラムがあったら……ということを話していると、面白がってくれる仲間がいた。今日集まったTISの伊藤さんや神﨑さん、そしてSUNDREDの吉井さんなど、サプライチェーン上では遠くにいる人たちも、実はつながっている。そういうつながりがまだまだたくさんあるはずで、それを見つけるきっかけにもなるようなツールを生み出したいと思っています」

森林資源のサーキュラーダイアグラムプロジェクトでは、それぞれの視点から取り上げた業界内の関係性や連鎖を整理し、峯村氏がサーキュラーダイアグラムに落とし込んでいる。幅広い視野で森林資源にまつわる産業構造が把握できるものになるため、その活用の仕方も多岐にわたると後藤は考える。

「共創の世界観を共有したいというのが第一ですが、それによってあらゆる分野の活動が、社会をどうやって良くしていくか、産業をどう盛り上げていくかなどに自然と向いていくような状態にしたいんです。活用の目的はそれぞれでも、サーキュラーダイアグラムをきっかけとした取り組みがどんどん生み出されていってほしいと思っています」

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峯村昇吾/造形構想株式会社(右奥)、後藤友尋/Bipass編集長(右手前)

 システムのレイヤーを捉え共通言語を生み出す

 「すべてが有機的につながり合っている」。

峯村氏は産業とそれを取り巻く環境の関係性について、そう表現した。生物とそれを取り巻く環境が相互に影響し合い森林の生態系を成り立たせているように、産業のシステムにおいても、複雑に関係し合う様々な分野の相互作用を含め全体像を把握し、持続可能な仕組みを見出していく必要がある。

環境問題の存在が世界に打ち出されたのは1945年。1970年代には公害や廃棄物の管理が問題となり、1980年代には廃棄物を原材料としてリユースするという考え方が現れた。2010年以降は、サーキュラーエコノミー推進を目的とするエレン・マッカーサー財団が、「自然のシステムを再生」「製品と原材料を最高の価値で循環させる」「ごみ・汚染を出さない設計」というサーキュラーエコノミーの3原則を掲げ、EUが成長戦略の核としてサーキュラーエコノミーへの移行を打ち出すなど、世界的にサーキュラーエコノミーの概念や取り組みが急速に広がっていった。

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それでも現在に至るまで地球の環境は大きな改善を見せておらず、地球温暖化は深刻さを増している。技術や産業が発達し環境負荷の低い製品が開発されると、消費行動が促進されると同時に廃棄量が増加し、さらに生産が加速するという本末転倒な連鎖も促されてきた。

「もはやデザインはプロダクトレベルではなく、システムのレイヤーで捉える必要がある」と峯村氏はいう。そこで誕生したのがサーキュラーダイアグラムである。

サーキュラーダイアグラムの狙いの一つは、生産・販売・消費までの動脈領域と、回収・中間処理・リサイクルという静脈領域がつながった産業構造を捉えることにある。全体を見通せるダイアグラムは異なる領域の媒介役となり、産業に携わるすべての人の共通の視点となり得る。峯村氏が「対話と共創のきっかけとなるサーキュラーダイアグラム」というように、森林資源のサーキュラーダイアグラムをさまざまな領域の視点を持ち寄りつくり上げることができれば、それを共通言語としながら情報の格差を埋め、業界の枠を超えてさまざまなプレイヤーがつながっていく未来が見えてくる。そのプロセス自体に価値があると峯村氏は考えている。

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課題解決へのより有効な仕組みづくりと共創のために

 TIS株式会社の伊藤淳氏は、ITと森林資源を掛け合わせたコミュニティ「WOOD DREAM DECK」発案者であり、自身も横瀬町に移住し持続可能な暮らしやテクノロジーを使った仕組みづくりを追求している。

「『WOOD DREAM DECK』は消費者のマインドセットを変えていくプログラムでした。環境のためにできることというよりも、自分のためにしたいことから始めて環境への貢献につなげていくというコンセプトです。昨年度まで横瀬町でサウナをつくったり、ミーティングブースを作ったりして実証実験をしてきましたが、今年度からは森林資源と森林に接点の無かった企業や団体などの新しい組み合わせをつくり、今までになかったような森林の価値発掘を行う予定です。森林の新たな価値を見出して、地域に還元していけないかと考えています」

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伊藤淳氏(右)神﨑美央氏(左)/TIS株式会社

こうした動きの中で、森林関係の課題や業界の関係性を捉える共通言語となるアイテムが必要だと感じていた伊藤氏。森林資源のサーキュラーダイアグラムの活用は、課題解決へのより有効な道筋を見つける一助ともなりそうだ。

「森林資源を取り巻く課題の全体像が把握できるダイアグラムをつくることで、例えば今まで関わりのなかった企業との共創の可能性が見えてきて、森林資源との新たな組み合わせで技術が使えるかもしれない。また課題の解像度を上げて取り組みの内容を精査し、より解決を促進させる提案をすることができるようにもなると思います。ダイアグラムの活用で、今よりも森林と企業の新しい価値を生み出す流れができるのではないかなと」

森林資源のサーキュラーダイアグラムには、同じくTIS株式会社の神﨑美央氏もメンバーとして加わり、ダイアグラムに落とし込む森林資源に関わる産業や企業、課題などをリサーチしている。

「私はまだ森林資源についてあまりよく知らない状態で参加しました。調べていく中で、本当に多方面に課題があると感じているので、何から手をつけていくのか、私たちがどういった提案ができるのか、模索しながらリサーチを進めています」と神﨑氏。

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WOOD DREAM DECK初の事例として完成した、地域の木材を活用し製作された「ocomoriサウナ」。MTG会場となったocomoriに併設されている。

そして新しい価値創造のプロジェクトを事業化し、エコシステムとして社会に実装するSUNDRED株式会社の吉井拓史氏も、自身の活動を通し、産業構造を俯瞰する必要性を感じていた。

「2年ほど前にフォレストリバイタライズ産業を立ち上げ、様々な分野の方と対話しながら、森林と人との新しい関係性を追求してきました。それぞれの分野にすばらしい活動をされてきた方がいますし、そうした方たちがいろんな地域に点在しています。ただそれぞれの活動がつながっていなかったり、考え方が伝えきれておらず、図らずも対立構造になっていたりすることもある。でもちょっと距離を置いてニュートラルに双方の話を聞いていると、実は同じところに向かっているのが見えることもある。それはすごくもったいないですし、サーキュラーダイアグラムで全体を“見える化”することで、お互いの方向性が見えて対話がうまくいったり、連携が生まれたりするのではないかと期待しています」

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吉井拓史氏/SUNDRED株式会社

完成のない過程のなかで生み出されるもの

 森林資源のサーキュラーダイアグラムは、初期バージョンとしてすでにその全体像が形づくられつつあるが、産業の生態系は常に変化し続けるものである。それに伴いサーキュラーダイアグラムもアップデートしていくことを想定している。その過程で新たな課題を見つけ、課題に取り組む仲間が増えていくなど、サーキュラーエコノミーの実現に向けて社会が動いていくきっかけになる可能性を大いに擁している。

今回のミーティングではメンバー同士でダイアグラムの現状を共有し、情報の整理の仕方や今後必要な要素について意見が交わされた。複雑な産業構造を複雑なままビジュアライズするサーキュラーダイアグラム。その意義を捉えつつ、実際の活用に際しては必要な情報を確実にキャッチできるものでなければならないことも再確認できた。

産業構造の中にある価値交換の流れや変化をどう表現するか、つくっている自分たちが仕組みを熟知し使いこなせるものにするにはなど、リリースに向けてクリアにしていくべき課題や活用のアイデアが言語化される機会となった。ここからはメンバーたちがそれぞれの分野のキーパーソンにヒアリングを進め、ダイアグラムの情報整理や充実を図っていく。

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「サーキュラーダイアグラム」PJへの参画募集

本サーキュラーダイアグラムのPJや、メディアBipassとのコラボレーションを希望される方は、こちらのBipass Facebookアカウントへのフォロー/メッセージをお願いします。

TEXT :Tomoko Nomura/PHOTO:Shingo Matsuoka

峯村 昇吾

造形構想株式会社峯村 昇吾

造形構想株式会社峯村 昇吾

元FABRIC TOKYO。武蔵野美術大学大学院造形構想研究科造形構想専攻の在学中に、勢いあまって造形構想株式会社を設立。在学中にファッション産業の複雑なサプライチェーンを可視化したサーキュラーダイアグラムを手がける。犬のブラッシングが好き。武蔵野美術大学特任研究員。

吉井 拓史

SUNDRED株式会社吉井 拓史

SUNDRED株式会社吉井 拓史

大学卒業後、日揮株式会社(現日揮グローバル株式会社)に入社。中東、東南アジア、オセアニア、北米のなど海外のプラント建設プロジェクトに従事。その後、森林をテーマに新規事業開発に携わり、社外では、経産省「始動」プログラム7期生シリコンバレー選抜、CHNAGE 2期 by ONE JAPAN、Sustainable Forest Action 3期などアクセラプログラムに参加。2022年5月よりSUNDREDにて「フォレストリバイタライズ産業」を始動。

伊藤 淳

TIS株式会社/クリエイティブディレクター伊藤 淳

TIS株式会社/クリエイティブディレクター伊藤 淳

前職では自動車メーカーの研究部門にて、2輪自動車エンジンの動力性能、燃費、環境性能に関わるシステムの研究・開発を経て、人のコミュニティ研究やモビリティサービス研究に従事。TISでは、デザイン組織戦略の立案や、新事業やクライアント案件のコンセプトメイク、ビジョン策定を担当。現在は、クリエイティブディレクターとして、社会課題解決に焦点を当てて新価値と新事業の創造にチャレンジしている。

神﨑美央

TIS株式会社神﨑美央

TIS株式会社神﨑美央

商社にて商品企画・仕入れ業務に従事後、マーケティング&コンサルティング会社に入社。リサーチャーとして業界・企業への直接ヒアリングによるフィールドリサーチを軸とした市場調査、コンサルティングを経験。2024年からTISへ入社し、業界動向調査・企業分析を中心にリサーチ業務を行っている。

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