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アグリテック

アグリテックとは?

アグリテック(AgriTech)は、農業(Agriculture)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語です。 従来、農業現場は高齢化や跡継ぎ不足などの影響による食料自給率の低下など、さまざまな問題を抱えてきました。アグリテックは、ドローンやAI、IoT、ブロックチェーンや、「Society5.0(※)」の中核となる最先端の技術を導入することでこういった問題を解決し、農業の活性化を図ります。 (※)サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムで経済発展と社会的課題の解決を両立する社会のこと。

アグリテックとスマート農業の違い

アグリテックと似た言葉に、「スマート農業」という言葉があります。

農林水産省では、スマート農業とは「ロボット技術やICT等の先端技術を活用して超省力化・高品質生産を実現する新たな農業」と定義しており、スマート農業とアグリテックはほぼ同義の言葉といえるでしょう。

なお、海外では、
スマートアグリ(Smart Agri)
スマートアグリカルチャー(Smart Agriculture)
アグテック(AgTech)

などとも呼ばれ、農業大国として知られるアメリカやオランダで積極的に取り入れられています。

日本では現在、国家主導でアグリテックを推進中です。
例えば農林水産省では、2019年に「農業新技術の現場実装推進プログラム」を公表し、官民をあげたプロジェクトとしてスマート農業を促進してきました。
また、経済産業省でも、2030年の食料自給率45%達成を目標に、農業の効率化を目指しています。
水産業・畜産業を除くスマート農業の2018年度市場規模は698億円にものぼると言われており、2030年度には1000億円の大台を超えると予想されています。

アグリテックの具体例

では、アグリテックの具体例について見ていきましょう。

ロボット
農作業は植え付けから収穫、除草や搬送など多岐にわたります。これらの作業のうち、単純作業を農機ロボットが担当することで、作業の効率化や人員の最適な配置が可能になり、省力化・省人化を実現できます。また、野菜や果物を収穫するロボットにはカメラやセンサーが搭載されたものもあり、機械学習や画像処理により的確な収穫時期やサイズを判断し、傷つけないよう丁寧に収穫する技術が使われているものもあります。

ドローン
従来、農薬や肥料の散布には、農業用の無人ヘリコプターが使われていましたが、高価で重量があるため、使える人は限られていました。一方ドローンは10kg~20kgほどの重量で、価格も100万円前後とお値打ちです。また操作もシンプルで高齢者にも扱いやすく、労働負荷の軽減につながり、さまざまな用途で使われています。

IoTとセンサー
従来、農地の監視や気温・湿度の計測は、人の手で行われていました。しかし、IoTやセンサーを活用することで、気温や温度を感知し、しきい値を超えた場合にアラートで通知するといった仕組みが可能になり、農業従事者の負担を大幅に軽減できます。

このほかにも、温湿度センサーのデータに基づいた水分の自動制御や、肥料の必要の有無をスキャニングで判定できるスマホアプリなど、さまざまな技術が開発されています。

アグリテックを実施する企業の事例

アグリテックは、まだまだ市場に伸びしろがあることから、ベンチャーをはじめとして国内外の様々な企業が参入しています。以下では、企業によるアグリテックの主な事例を紹介します。

IT事業を手掛けるA社
AIやIoT、ビッグデータを駆使した事業を創造するA社では、事業の一環として「農業DX事業」を推進中。「ピンポイント農薬散布」を実現するドローンや、作物の生育ステージや圃場の状態を可視化するIoT技術、高度な制御と省力化を実現するロボットなどのスマート農業技術を農業従事者に無償提供し、現場の省力化と作物の高付加価値化に取り組んでいます。

農業機械大手のB社
農業機械大手のB社では、「ロボットトラクター」を提供しています。これは、自動運転機能を搭載したトラクターで、乗車することなく、タブレット操作で操縦できます。また、超音波やレーザーを活用したセンサーや、衛星による数センチ単位の高精度測位技術を搭載し、まっすぐな田植えや刈り取り時の旋回も自動で可能です。

農業ビジネスを展開するC社
農地活用・経営支援など幅広い事業を展開するC社では、農業や酪農、畜産などの求人を中心とした農業専用求人サイトの運営や、農地や遊休農地のリメイクを促進するサービスの運営を実施しています。農業現場の人手不足や農地の相続問題を、ITの力で解決に導きます。

ITで農産物の流通を促進するD社
小売店や飲食店など、さまざまな流通チャネルを持つD社では、農産物を店舗の直売コーナーで委託販売するプラットフォームを提供中。とりわけ、同社が開発したアプリでは、全国の農産物の相場や店頭価格を確認できるほか、QRコードを読み込むことで、生産者の情報を確認できます。

農業用ロボットを開発するスペインのE社
スペインのE社では、さまざまな農業用ロボットを開発しています。例えば、自動でいちごを収穫するロボットは、画像処理装置のGPUとAIによりいちごの成熟具合を細かく判断し、24本のアームで丁寧な手つきでいちごを摘み取ります。

NASAの元エンジニアが設立したミャンマーのF社
長年にわたる森林伐採や災害で森が荒れているミャンマーでは、F社によるドローンを活用した植樹が行われています。同社のドローンは、上空を飛行して地形や地質に関するデータを収集したのち、解析から植林に適した場所と種を判定。そして、自動運転で地図をたどりながら、種子ポッドを地面に散布します。

アグリテックとカオスマップ

さまざまな企業が、各々の得意分野を活かしたサービスを提供しているアグリテック。競合他社や各分野の動向を知りたい場合は、カオスマップを確認してみましょう。

カオスマップとは、特定のサービスや商品を提供する事業者を分野別に可視化した「業界地図」のこと。カオスマップを見ることで、業界内の競合相手や勢力関係を俯瞰的に見渡せるほか、業界の特定領域に強い企業やサービスを把握できます。

アグリテックが注目される理由

以下では、アグリテックのメリットについて説明します。

【アグリテックが注目される理由①】農作業の自動化・効率化が図れる
アグリテックの主な目的は、農業の効率化です。

例えば、広大な畑へ手作業で種や農薬を撒くのは時間がかかりますが、ドローンを活用すれば作業時間が大幅に短縮でき、省人化も期待できます。また、作物がどの程度成熟しているかをAIが判断できれば、未成熟の作物を誤って収穫するリスクも抑えられます。

アグリテックの活用により、農業分野での長時間労働を改善でき、働きやすい環境の整備を実現できるのです。

【アグリテックが注目される理由②】農家の負担が軽減される
従事者への身体的な負担が大きい農業。アグリテックが普及すれば、従来は人の手で行っていた農作業を農業用ロボットに任せられます。これにより、ロボットが人間に代わって収穫することが可能になり、農業従事者の負担が抑えられます。

また、負担を軽減できれば、3K(きつい・汚い・危険)という従来のイメージを改善し、女性や若者が農業に参入しやすくなるという面もあります。

【アグリテックが注目される理由③】持続可能な農業を実現できる
農業従事者の高齢化が進む中、彼らのノウハウを継承し、持続可能な農業を構築することもアグリテックで解決する課題のひとつです。

2020年の統計では、日本の農業従事者の平均年齢は67.8歳で、人口は年々減少しています。熟練農家の豊富な知識や経験をデータ化し、次の世代へ引き継ぐことで、新規就農者や若者でも、効率的な農業の実施が可能になります。

まとめ

人材不足や食糧不足など、さまざまな問題を抱える農業の救世主となり得るアグリテック。本記事では、国内外の企業の事例を交えながら、そのメリットについて解説しました。

アグリテックの活用は、世界的に盛んになっています。ヒトの代わりにロボットが農業を行う光景が当たり前になる日も、そう遠くないかもしれません。アグリテックの今後に要注目です。

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