資源の新しいルートを探るメディア

INTERVIEW

WORDS

ABOUT US

CONTACT

SHARE!

おすすめの記事

WORDS

アクアポニックスアクアポニックスアクアポニックスアクアポニックスアクアポニックスアクアポニックス

SHARE!

アクアポニックス

アクアポニックスとは?

アクアポニックスは、水産養殖(Aquaculture)と、水耕栽培(Hydroponics)を合わせた造語で、魚と野菜を同じシステムで育てる持続可能な循環型農業のこと。魚と植物が良い影響を与え合うことで、土づくりや水やり、水替えなどの手間が軽減され、作物の生産性も高まるという一石二鳥の農法です。

アクアポニックスは、1980年頃にアメリカで発祥したのが始まりとされ、NGOや国連で実用化されていましたが、認知度はそれほど高くありませんでした。しかし、その後研究が進み、安定した生産が可能になったことから世界的に拡大。さらに、近年は、2015年にSDGsが採択されたことで、にわかに注目を集めています。

アクアポニックスの仕組み

アクアポニックスの仕組みは、以下の通りです。

1.魚がエサを食べて排せつ
  魚がエサを食べ排せつします。排せつ物には、魚にとって有害なバクテリアが含
  まれています。

2.魚の排泄物をバクテリアが植物の栄養素に分解
  生物ろ過装置を行うバクテリアが、魚の排せつ物に含まれるアンモニアや亜硝酸を菌が硝酸、硝酸塩に分解。硝酸は植物の養分になります。

3.植物が水を浄化
  植物がアンモニアを硝酸塩に分解し、吸収することで水が浄化され、きれいになりま す。

4.浄化された水で魚が成長
  浄化された水が再び水槽に戻され、きれいな水で魚が育てられます。この循環が繰り  返されることで、魚と植物を水替えなしで同時に育てられます。

image2

出典:アクアポニックス https://aquaponics.co.jp/

また、アクアポニックスの循環システムには、以下の二つがあります。

■シングルループ
養殖水槽と濾過装置、野菜栽培システムが1つにつながっている基本的なシステム。家庭用や商業用のアクアポニックスで広く利用されています。小型で栽培管理がしやすく、繰り返し水をリサイクルでき節水できるのが特徴です。

■ダブルループ(デカップルシステム)
水槽やフィルタ―からなる養殖エリアと野菜の栽培槽からなる水耕エリアで水の循環が分けられているシステム。養殖エリアの水を定期的に野菜栽培側に移したり、野菜によって浄化されてきれいになった水耕エリアの水を養殖側に移すことで循環する仕組みです。別に管理できるため、魚にとって毒となる農薬や魚の治療薬の使用ができるのが大きな特徴です。

では実際に、水産養殖と野菜の栽培の設備について詳しく見ていきましょう。

アクアポニックスの設備① 水槽での魚の養殖

アクアポニックスの水産養殖は、魚を育てる飼育槽のほか、ゴミをきれいにする物理ろ過装置、魚の排せつ物をバクテリアがきれいにする生物ろ過装置、空気を供給するエアポンプ、水を汲み上げる水流ポンプなどで構成されます。

アクアポニックスの設備② 野菜の栽培

野菜の栽培の設備は、栽培規模や栽培する野菜の種類によって水耕栽培と培地栽培に大きく分けられます。

■水耕栽培
土を使わず、水と液体肥料(養液)で野菜を育てる方法。主に商業用(農業)で用いられ、背が低くて倒れないリーフレタスやハーブなどの葉物野菜が育てられます。

■培地栽培
土やハイドロボールを使って野菜を育てる方法。主に趣味用で用いられ、水耕栽培に比べて拡張性こそ劣るものの、さまざまな品種の野菜を育てられます。

また、水耕栽培は、初期投資や面積の違いにより、更に二つに分かれます。

・DWC(Deep water culture)
水槽に発泡スチロールなどのラフト(いかだ)を浮かべて、そこに野菜を植えて育てるシステム。栽培槽が20~30cmの水深のため根を大きく伸ばす野菜でも育てられ、トマトやナスなどの実をつける野菜も栽培できるのが特徴です。

・NFT(Nutrient Film Technique)
野菜を栽培する栽培槽にわずかに勾配をつけ、上方から溶液を流すシステム。栽培槽は塩ビパイプなどでも代用でき、DIYしやすく、水の使用量が少ないですが、DWCに比べて構造が複雑なため、DWCに比べて製作にコストがかかります。


アクアポニックスのメリット・デメリット

世界的に注目を集めているアクアポニックスですが、デメリットも少なからずあります。本章では、アクアポニックスのメリットとデメリットについて分かりやすく説明します。

アクアポニックスのメリット

・新鮮で安全な完全オーガニック野菜が栽培できる
魚を飼育する環境を維持するため、アクアポニックスでは、農薬や化学肥料が使用されません。そのため、アクアボニックスで育った野菜はオーガニック(無農薬)になります。なお、アメリカではアクアポニックスで採れた作物に対し、USDA(オーガニック認証)の取得が認められています。

・生産効率性と収益性が高い
アクアポニックスは、土壌栽培に比べて約1/2の日数で収穫が可能なほか、ハウス内で栽培を行うため、通年での安定した野菜の生産が可能です。そのため、市場のニーズに合わせた生産を計画的に行えます。

・土づくりや水やり、水替えが不要
土が必要ないため、土づくりや水やりにかかる労力を削減できるのに加え、連作障害(同じ科の野菜を同じ畑で繰り返し育てると生育不良を起こすこと)の恐れがなく、除草の必要もありません。

・水替えが不要で環境に優しい
植物の力で水が浄化されるため、水替えの必要がなく、70%〜80%の節水を実現できます。また、農薬や化学肥料を使わないため、土壌を汚染することもありません。

・規模や設置場所を自由に設計可能
アクアポニックスは、土壌が不要なため、設置場所を選びません。そのため、規模や形も自由に設計可能で、都市農園や家庭菜園、園芸介護用、店内展示用など、用途にあわせてさまざまなタイプを作れます。

・作物以外の事業展開が可能
作物生産以外にも、ワークショップの開催や農場ツアー、栽培キットの販売など、さまざまな事業の収益源として利用できる可能性があります。 

アクアポニックスのデメリット

・単価の低い淡水魚しか養殖できない
アクアポニックスで養殖できる魚は、条件を揃えない限り、ティラピアやナマズ、コイといった単価の低い淡水魚に限られます。そのため、野菜の生産だけで経営が成り立つコスト構造を設計する必要があります。

・ランニンググコストがかかる
アクアポニックスは施設園芸です。そのため、植物工場ほどではないにせよ、露地栽培よりもはるかに高いランニングコストがかかります。

・水耕栽培の場合は栽培できる野菜が限られる
深く根を張ることが困難な水耕栽培の場合は、栽培できる野菜がリーフレタスやハーブなどの葉物野菜に限られます。しかし、アクアポニックスが国内ではまだ浸透していなくブランディングできていないため、植物工場産の野菜とあまり変わらない値段で販売されています。

・認知度が低くブランディングが難しい
日本でのアクアポニックスの認知度は、世界的に見ても低く、市場に商品が並んでも、普通の農産物との違いが伝わりづらいのが現状です。また、講習会などの学習の場も整っているとは言い難い状況です。

・病気や害虫の対策が困難
農薬や魚の治療薬が使えないため、病気や害虫の対策が必要になります。

・栽培システムの変更が困難
アクアポニックスは、農作物の種類によってシステムが設計されるため、栽培システムの変更が難しく、作物の種類を変えた場合、いちからシステムを作り直す必要がある場合があります。

家庭用アクアポニックスの注意点

アクアポニックスは近年、企業での導入が進んでおり、家庭でも簡単に実践できます。しかし、実際にやってみると難しいという声もちらほら。本章では、その対処法についてお伝えします。

アクアポニックスは難しい?

アクアポニックスが難しい理由は、「魚が弱ってしまう」ことと「野菜がちゃんと育たない」ことの2つが挙げられます。

実際、アクアポニックスは、微生物が発生して水質が安定するまでに約1カ月を要します。しかし、逆に言えばこの1か月を乗り切れれば、水質は安定し魚が育ちやすい環境を整えられます。

では、具体的にどんな対策をとれば問題を解決できるのかについて、個別に見ていきましょう。

<魚が弱ってしまう>

・魚の数が適切ではない
フィルターの性能より多くの魚を入れてしまうと、魚の排せつ物から出るアンモニアが蓄積し、魚に悪影響を与えます。逆に、魚が少なすぎると養分である硝酸塩が十分に野菜に供給されず、うまく成長しません。そのため、アクアポニックスを作る際には魚と野菜のバランスを考えて設計する必要があります。

・魚のエサの量が多すぎる
魚へのエサのあげ過ぎは、水質悪化につながります。そのため、エサやりは慎重に行いましょう。なお、微生物が発生するまでは、3日に1回程度のペースが理想的。その後は、水質検査キットで水質を観察しながら微生物が十分発生したかどうかチェックしましょう。

・安全ではない水を使ってしまう
アクアポニックスで使う水は、魚と野菜の双方に安全である必要があります。水温やPH(中性の7.0前後が適切)、塩素が適切かどうか、水質パラメータなどで逐一確認しましょう。

・魚がアクアポニックスに適していない
アクアポニックスで使う魚には、向き不向きがあります。コイやティラピアなど、水質の変化に強い魚や繁殖させやすい魚を選びましょう。

<植物がちゃんと育たない>

・エサの量が適切でない
魚の排せつ物が分解されてできた硝酸塩は、野菜の肥料になります。そのため、植物をうまく育てるには、魚のエサの量を管理する必要があります。定期的な観察や水質検査を通して、エサの量が適切か判断しましょう。

・十分な光が当たっていない
植物は光合成によって育つため、光が不足すると野菜は育ちません。もし日当たりが悪い場合には、光の当たりやすい場所に水槽を移動するか、植物専用のLEDライトで光を補いましょう。なお、野菜の種類によっては屋内栽培に向かない植物もあるので、事前に確認しましょう。

・害虫駆除の準備をしていない
アクアポニックスでは農薬が使用されないため、害虫対策が必須です。特に室内は、害虫が増えにくい環境ではありますが、一度、害虫が増えると天敵がいないため住み着いてしまいます。植物の様子を日々観察し、場所に応じた害虫対策を行いましょう。

アクアポニックスは自作可能?

では、実際にアクアポニックスを自作してみましょう。さまざまなタイプのシステムがありますが、今回は最も簡単なタイプの作り方を紹介します。

材料
・水槽
・植物栽培用のケース
・エアレーション
・水中ポンプ
・配管(塩ビパイプ)
・配管継ぎ手
・ハイドロボール
・ライト
・育てるもの(魚・植物)

作り方

1.植物栽培用のケースを設置する
  植物栽培用のケースに排水用の穴を開け、水槽内に水が落ちるよう塩ビパイプをつなぎます。
  その後、ケースを水槽の上や棚の上段に設置します(水槽の上に設置する場合には、
  水槽用のレールも設置)。

2.配管・ポンプ・エアレーションを設置する
  水槽にポンプを固定し、水が植物用コンテナの上から出るように配管します。次に、
  エアレーションを設置し、ケースの上にライトをセットします。

3.植物を植える
  ケースの穴の部分にネットを噛ませ、ケースの底にハイドロボールを敷き詰めます。  ハイドロボールには細かい穴がたくさんあり、その穴が微生物の巣となるほか、野菜 が根を張って倒れないようにする役割もあります。魚を入れる準備ができたら、ケースに直接種を蒔くか苗を植えます。

4.魚を入れる
  水を入れてポンプを回し、微生物が増えるまで1ヶ月程度待ちます。水質が安定した
  ら、魚を入れます。

まとめ

農薬も化学肥料も使わず、水と魚の力だけで行う有機栽培・アクアポニックス。いわば「小さな生態系」ともいえるこのシステムは、地球に最もやさしい理想的なエコ農法とも言われています。本記事では、その魅力について紹介しました。

しかし、世界的に見て日本での認知度はそれほど高くなく、まだまだ浸透していないのも現状です。DIYで自作もできるので、気になった方は、早速はじめてみてはいかがでしょうか。

  1. HOME
  2. WORDS
  3. アクアポニックス

| PICK UP INTERVIEW | PICK UP INTERVIEW | PICK UP INTERVIEW | PICK UP INTERVIEW | PICK UP INTERVIEW | PICK UP INTERVIEW | PICK UP INTERVIEW