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サーキュラーエコノミーとは?
2010年以降、欧州の成長戦略 Europe 2020がきっかけで欧州を中心に広まった「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」。環境問題やSDGsなどで高まる持続可能な社会実現のために、従来型の経済モデルから、資源を循環させる経済モデルへのシフトが早急に求められています。グローバルの流れを受け、経済競争力を高めるため日本でもサーキュラーエコノミーへの転換を迫られているサーキュラーエコノミーについて紹介していきます。
サーキュラーエコノミーとは?
サーキュラーエコノミー(循環型経済または循環経済)とは、過去250年にわたる資本主義の歴史における最大の革命と言われており、持続可能な社会を実現するための経済システムと経済活動に関する、発展的かつ革新的な産業モデルを指します。
これまでの経済活動は、自然界から資源やエネルギーを取り出し、それらを使って製品を製造し、使用し、使い終わった製品は廃棄するという、大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とした一方通行型のリニアエコノミー(直線型経済)でした。その結果、資源やエネルギーの不足、地球温暖化・廃棄物処理等の環境問題が発生し、それだけでなく経済成長の停滞を招くことにも繋がっていました。
これらの課題を統合的に解決する経済システムが、このサーキュラーエコノミーという考え方です。
資源や製品を経済活動の様々な段階(生産・消費・廃棄など)で循環させることで、資源やエネルギーの消費や廃棄物発生を無くしながら、その循環の中で付加価値を生み出すことで、経済成長と環境負荷低減を両立する国際的な取り組みです。
日本でも類似した概念として、「循環型社会」と呼ばれる資源や製品の循環を通じて環境への負荷を低減させる取り組みがありますが、サーキュラーエコノミーでは、資源の循環利用や効率化、自然環境の再生を促進するだけでなく、「経済発展・成長と新たな雇用創出」を実現する点に大きな違いがあります。
サーキュラーエコノミーが企業に注目される理由
地球環境保護に対する消費者や投資家の関心は年々高まっており、環境に優しい製品やサービスは選択的に購入されるようになってきています。そのため、企業が資源循環や有効利用を積極的に進めていることは、企業イメージの向上にも繋がり、サーキュラーエコノミーは新たな市場の拡大が見込める成長市場と捉えられます。
原材料の収集や生産などの過程においては従来のやり方と異なるため、サーキュラーエコノミーへの切り替えは各企業のコスト増になることと想像できますが、今後資源の枯渇などの世界的リスクへの対応策として、また先ほど挙げた企業側のメリットなどを考慮すると、長期的には合理的な選択と考えられ、サーキュラーエコノミー対応を実施する企業が増えているのです。
サーキュラーエコノミーの3原則
国際的にサーキュラーエコノミーを推進する機関であるイギリスのエレン・マッカーサー財団は、サーキュラーエコノミーの3原則として
Design out(排除する)・Circulate(循環する)・Regenerate(再生する)の3つを挙げています。
経済活動において、限りある資源を最適な循環をし続けさせるために製品・サービスをつくる設計段階から、
1. Design out waste and pollution(廃棄物や汚染を出さず、排除する設計をデザインすること)
2. Circulate products and materials (at their highest value)(製品と原材料を、高い価値を保てるようメンテナンスを行い、循環させること)
3. Regenerate nature(再生可能な資源を用い、限りある資源を大切に使い、かつ自然のシステムを再生すること)
これまでは「収集→生産→使用→廃棄」というリニアエコノミー(Linear Economy・直線型経済)の経済活動が主流でした。リニアエコノミーは、製品やサービス利用後に大量の廃棄物が発生することまでは考慮されていませんでした。調達ができる天然資源の量や、廃棄物の回収や処理には限りがあり地球環境に負担が掛かるため、リニアエコノミーは持続不可な経済モデルです。
サーキュラーエコノミーはあらゆるフェーズにおいて次の用途や再資源化へのストーリーを描くことが必要と説いています。
サーキュラーエコノミーの概念図「バタフライ・ダイアグラム」
エレン・マッカーサー財団は、上記3原則に基づいてサーキュラーエコノミーの全体像を示す概念図、通称「バタフライ・ダイアグラム」を公表しています。
左右の循環が蝶の羽のように見えるため、バタフライ・ダイアグラムと呼んでおり、全ての資源・物質が2つのサイクルどちらかの循環を辿っていると考えます。
左側が生物的(植物・動物等の再生可能な資源の循環)サイクルで、右側が技術的(石油・金属・鉱物等の枯渇性資源の循環)サイクルです。
生物的サイクルでは、資源は消費されても微生物による分解などにより堆肥としての活用や、嫌気性消化によりバイオマスエネルギーとして生物圏に再生され、また元のサイクルへと循環していきます。
技術的サイクルでは、資源はメンテナンス・再使用・再製造・リサイクルによって品質が保てる限り使い続けられます。このサイクルにより、長く使える品質の良い商品の生産や、生産側や消費側発のシェアリングサービスなどの仕組みへの促進が期待されます。
サーキュラーエコノミーとSDGsの関係性
SDGsは国連が定めた世界共通の「目標」であり、サーキュラーエコノミーは「経済システムの新しいモデル」を指します。SDGsの各目標のうち、サーキュラーエコノミーの領域に関係が深いのは、主に4つの目標です。
目標12「つくる責任 つかう責任」。その中のターゲット12-2に「天然資源の持続可能な管理および効率的な利用」、そして12-3には「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる」とあり、さらに12-5には「予防、削減、リサイクル、およびリユースにより廃棄物の排出量を大幅に削減」とサーキュラーエコノミーそのものの行動目標が記載されています。よって、サーキュラーエコノミーはSDGs達成のための必要不可欠な手段であると言えるでしょう。
目標13「気候変動に具体的な対策を」。廃棄物を出さないことを目指しているサーキュラーエコノミーは、二酸化炭素などの温室効果ガス排出を軽減させ、目標達成に貢献します。
目標14「海の豊かさを守ろう」。現在年間800万トンのプラスチックなどのゴミが海へ流れ、2050年には海中のゴミが魚の量を超えると予想されています。サーキュラーエコノミーでは、製品の設計段階から廃棄物を出さず、自然を再生することをデザインするため、海洋汚染と海の生態系保護に繋がります。
目標15「陸の豊かさを守ろう」。リニアエコノミーにおいては資源の採掘のための大規模な開拓で自然破壊と生物絶滅の危機に追い込みました。サーキュラーエコノミーはRegenerate nature(リジェネレート ネイチャー:自然の再生)を原則のひとつとしているため、資源を循環して使い続け、残された貴重な資源や生態系を守ることに繋がります。
また、期間の面で比較をすると、SDGs達成目標の2030年まで残り10年を切り、国連は「行動の10年」として取り組みを加速させるよう呼びかけているように、SDGsは限定的な取り組みを指しますが、サーキュラーエコノミーは永続的に必要な取り組みです。
サーキュラーエコノミーとリサイクルの違い
リサイクルは、廃棄物を再資源化、もしくは適切な廃棄物の処理を行うことで環境への負荷を可能な限り低減すること、つまり、「廃棄物があるもの」というリニアエコノミーの考え方が前提であるに対し、サーキュラーエコノミーは「廃棄物と汚染を発生させない循環」を描いているのが大きな違いです。
日本でリサイクルが先に浸透した理由は、2000年に公布された「循環型社会形成推進基本法」の中で、Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の3Rで循環型社会の実現を説いているということが要因として大きいと考えられます。
リサイクルは、製品を原材料レベルにまで戻して再利用することのため、製品としての寿命が短くなり、膨大なコスト(水などの資源、エネルギー、マンパワー)が必要となってしまいます。リサイクルを行う前に、バタフライ・ダイアグラムの技術的サイクルにあるように、出来上がった製品にはメンテナンス・再使用・再製造で品質が長く維持する努力を行い、製品寿命を延ばしていきたいですね。
サーキュラーエコノミーに関する日本の取り組み事例
各社で取り組んでいる一例をご紹介します。
■本田技研工業:生産工程の最適化による生産ロスの削減や端材・副産物の再利用
従来、副産物として処理されていたブランキングの端材を加工しやすい形状に打ち抜き、外部協力メーカーに支給して小物部品の材料として使用し、 プレスの副産物発生を低減している。
■西友・日立:IoT等を活用し、需要に応じた供給を徹底することによる販売ロスの削減
AIによる需要予測に基づき、自動発注AIにより店舗・商品ごとに高度な需要予測を行い、それらを基に発注量を決定するとともに、発注作業の自動化を可能にしている。
■住友三井オートサービス:メンテナンスリースの徹底と再生部品の利用で車の価値をより長く
中古車市場において、メンテナンスが適切に行われているかや、事故歴の有無で価値が大きく変わるため、定期的なメンテナンス実施およびその記録に力を入れている。また、修理メンテナンス時に使用する部品をできる限り再生部品を使用している。
■エシカルスピリッツ株式会社:世界初の循環型“エシカル・ジン・プロジェクト”
日本酒造りの過程で廃棄されてきた酒粕を、全国の酒蔵から購入して蒸留し、クラフトジンやウィスキーを生産。その販売利益で米農家から新米を購入し、米農家はその新米を全国の酒蔵に納品することで、酒蔵は再び日本酒を生産するという三者の循環が生まれ、物理的・経済的なロスを無くすことを可能にした。
まとめ
従来の大量生産・大量消費型の経済社会活動は、大量廃棄型の社会を形成し、健全な物質循環を阻害し、気候変動問題や大規模な資源採取による天然資源の枯渇、生物多様性の破壊など様々な環境問題を引き起こしてきました。資源・エネルギーや廃棄物発生量の増加のみならず、食糧需要の増大も世界全体で深刻化しており、一方通行型の経済社会活動から、持続可能な形で資源を利用するサーキュラーエコノミーへの移行を目指すことが世界の潮流となっています。
サーキュラーエコノミーは、気候変動や生物多様性、廃棄物などのグローバルの課題を解決するヒトと環境と資源にとって豊かな新しい枠組みです。
わが国では2021年1月に環境省と経団連が、循環経済の取組の加速化に向けた官民連携による「循環経済パートナーシップ」を立ち上げることに合意し、3月に同パートナーシップが発足し、さらに、環境省は2021年3月に世界経済フォーラム(WEF)と共に「循環経済ラウンドテーブル会合」を開催し、日本企業の循環経済に関する技術や取組を世界に発信しました。今後も、循環経済の取組とともに、ビジネス戦略として企業が資源循環に取り組むことの加速化、必要な法制度の整備、および日本の先進的な技術やソリューションを内外に発信することで、企業の中長期的な競争力の強化を図っていくことが重要と、環境省が毎年発行する令和3年版『環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書』(前年度の自然環境状況に関する報告、本年度に目指す環境保全に関する施策の二部構成)に明記されています。
サーキュラーエコノミーにより、世界で約500兆円の経済効果があると言われている成長市場の獲得も見込めるため、未来への投資としてそれぞれの立場で実践していきましょう。
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