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カーボンオフセットって?わかりやすく解説
カーボンオフセットとは、経済行動や日常生活で避けられない温室効果ガスの排出について、排出量が減るように削減努力を行った上で、それでも排出される温室効果ガスの排出量を他の場所での削減・吸収活動によって埋め合わせる(=オフセット)という考え方です。 イギリスをはじめ、アメリカやヨーロッパ、オーストラリアなどで活発に行われており、日本でも民間での取り組みが徐々に拡大しています。
カーボンオフセットの仕組み
環境省の『カーボン・オフセットガイドライン』では、カーボンオフセットを次の3つの過程に分けて説明しています。
①知る
温室効果ガスの排出量を算定する
②減らす
温室効果ガスの削減努力を行う
③オフセット
削減しきれない温室効果ガスに関しては、温室効果ガス削減・吸収の取り組みに資金を
提供することでオフセット(埋め合わせ)を行う
カーボンオフセットでは、温室効果ガスという目には見えないものを扱っています。そのため、「透明性」や「信頼性」を確保することが重要です。
そこで、日本では、国がカーボンオフセットを認証する「カーボン・オフセット制度」を創設し制度化しました。2017年4月からは環境省の公開文書に準拠しながら民間主導にて行われています。
また、併せて、「J-クレジット制度」も実施されています。この制度は、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用によるCO2等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を、クレジットとして国が認証する制度です。
創出されたクレジットを活用することにより、カーボンオフセットを促進し、温室効果ガスの排出削減につなげられます。
出典:環境省「カーボン・オフセットガイドライン Ver2.0」p.8
https://japancredit.go.jp/pdf/application/guideline_ver.2.0.pdf
出典:経済産業省
カーボンオフセットに取り組むメリット
近年さまざまな企業で採用されているカーボンオフセットですが、環境のみならず企業にもメリットがあります。今回は、その一端を紹介しましょう。
・温室効果ガス削減を社会全体で促進できる
カーボンオフセットの最大のメリットでもあり、最大の目的です。温室効果ガス削減が得意な企業はさらなる削減に取り組み、それをクレジットに変換し、温室効果ガス削減が難しい企業がそれを買い取ることで、無理な設備投資などから免れながらクレジットの取引先で排出量を削減でき、企業間で連携して温室効果ガスの削減に貢献できます。
・企業のイメージアップを図れる
日本では環境問題に取り組む企業が参加する「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」や「RE100(Renewwable Energy 100)」、「SBT(Science Based Targets)」などへの加盟企業が世界トップクラスとなっています。カーボンオフセットへの取り組みが企業イメージのアップにつながります。
・他社との差別化を図れる
地球温暖化への取り組みを前面に押し出すことで、他社との大きな差別化を図れます。また、カーボンオフセットは製品やサービスへの付加価値要素となるため、売上向上も期待できます。
・参入障壁が低い
カーボンオフセットは、RE100などの取り組みとは異なり、枠組みではないため、参入に伴う審査も不要です。そのため、個人や企業、自治体など誰でも簡単に参入でき、活用に伴う審査も不要です。
カーボンオフセットとカーボンニュートラルの違い
カーボンオフセットと似た言葉に、「カーボンニュートラル」があります。
「カーボンニュートラル」とは、温室効果ガスの排出量を植林や森林管理などによる温室効果ガスの吸収量で相殺して、全体として排出量を±ゼロにすることです。世界共通の長期目標として2015年にパリ協定が採択され、120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」の目標を掲げているところです。
両者の違いは、カーボンニュートラルが温室効果ガスの排出量と吸収量が全体として見て±0を目指すのにするのに対し、カーボンオフセットは温室効果ガスの排出量をクレジットといった取引で埋め合わせるのが特徴で、温室効果ガスの排出軽減や吸収量増加につながる活動に投資する点にあります。
カーボンオフセットの事例
環境省による「カーボンオフセット・ガイドライン」では、具体的に以下の5つの取り組みが代表的なものとして挙げられています。
・オフセット製品・サービス
・会議・イベントのオフセット
・自己活動によるオフセット
・クレジット付き製品・サービス
・寄付型のオフセット
では、実際にこの項目に沿ってカーボンオフセットの実用例について見ていきましょう。
オフセット製品・サービス
製品やサービスの製造から輸送、販売から廃棄に至るまで、サプライチェーンを通じて排出される温室効果ガスをオフセットしている製品やサービスを指します。
例えば、オフィス家具の老舗メーカーであるA社では、製品の資源調達から消費から処分までのライフサイクル全体でカーボン・オフセットを完了した、オフィス用チェアを販売しているほか、クレジットのプロバイダーとして、カーボン・オフセットを導入したい企業の相談や支援も実施しています。
会議・イベントのオフセット
国際会議やコンサート、スポーツ大会などの大規模なイベントでは、電力をはじめさまざまなエネルギーが使用されており、これらのエネルギー消費に伴い排出される温室効果ガスを、クレジット購入によりオフセットする試みも多数行われています。
代表的な例が、2021年に開催された東京オリンピックでしょう。本大会では、2050年までにCO2排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京戦略」の一環として、都内の大規模事業所にカーボンオフセットを行う「キャップ&トレード制度」を実施。カーボンニュートラルを実現しました。
自己活動によるオフセット
自社ビルの電気の使用にともなって排出される温室効果ガスのオフセットなど、個人や組織の事業活動で排出される温室効果ガスを直接オフセットしている取り組みのこと。
例としては、印刷インキなどの製造・販売を行うB社が、自社のCSR報告書の発行の際に、日本語版1部あたり518gの温室効果ガスをオフセットした取り組みなどが挙げられます。
クレジット付き製品・サービス
事業者が、製品・サービスやチケットにクレジットを付し、購入者やイベント来場者の日常生活における温室効果ガス排出量のオフセットを支援する取り組みのこと。
例としては、保険会社大手のC社が、自動車保険の加入時に加入者の日常生活で出た温室効果ガス排出量の一部(50円相当分)をオフセットする取り組みなどが挙げられます。
寄付型のオフセット
製品・サービスを提供する事業者やイベント主宰者が消費者に寄付を募り、売り上げの一部をクレジット購入に用いることを宣言し、消費者に購入を促す取り組みのこと。消費者とコミュニケーションを図りつつ、クレジットを活用できるのが特長です。
例としては、株式会社八葉水産が自社製品「三陸産味付めかぶ」「三陸産うすあさめかぶ」の販売個数に対して1商品1円を森林支援に役立てる取り組みなどが挙げられます。
参考:三陸産めかぶ1個につき1円が宮城県登米市の森林支援に使われています。(八葉水産)
個人でもできるカーボンオフセット
企業や団体で行うイメージが強いカーボンオフセットですが、自動車の移動を徒歩に変えたり、冷暖房の設定温度を変えたりと、個人でも行うことができます。以下では、個人のカーボンオフセットをサポートするアプリやプロジェクトについて紹介します。
Klima
・Klima(クリマ)
洗練されたUXで手軽にカーボンオフセットができるサブスクリプションサービス。飛行機に乗る頻度や食生活、再生可能エネルギーを利用しているかなど、簡単な質問からユーザーのCO2排出量を算出。排出量は月額料金に換算され、相殺するための環境プロジェクトへの投資が行えます。また、取引後は、オフセットにより何本の木が植えられたかなど、オフセットが環境に及ぼした影響を「見える化」し、ソーシャルメディアで共有できるのも特長です。
参照:https://chizaizukan.com/property/614
Cloverly
・Cloverly(クロ―バリー)
モビリティ移動やEコマースの配送、金融取引など様々な活動における炭素排出量をリアルタイムで算出し、カスタマーへのカーボンクレジットの購入を促すマーケットプレイスのAPIサービス。カーボンオフセットの取引は「サステナビリティレポート」としてデジタル証明書を発行でき、SNSへの投稿も可能です。
参照:https://chizaizukan.com/property/605
・Wren
個人の温室効果ガス排出量に応じたオフセットができる投資プロジェクト。いくつかの質問から日常生活で排出しているCO2の量を算定し、その後、相殺のための植林や森林保護活動などの温室効果ガス削減事業への投資を促します。日本円も含む様々な通貨に対応しており、世界各国様々な場所からカーボンオフセットに参加できる点がポイントです。
カーボンオフセットの問題点・今後の課題
環境、社会、企業と三方よしのカーボンオフセットですが、いくつか問題点も存在します。
・クレジットが「免罪符」になる
クレジットという制度は、お金さえ払って埋め合わせすればいくらでもCO2を排出してもよい、という「免罪符」になってしまう危険性があります。現にイギリスでは、2005年にカーボンオフセットによりカーボンニュートラルを達成したと発表した企業のCO2排出量が、実際には排出量が増加していたことが明らかになっています。
・温室効果ガスの算定方法が不明確
温室効果ガス吸収量の算定が統一されておらず、中には実効性があるのか疑わしいものも含まれています。現に、温室効果ガス排出削減の支援団体「Tufts Climate Initiatives」では、プロバイダーにより0.19〜0.44t-CO2の差があると報告しています。
・取引の実態が不明瞭
カーボンクレジットは相対取引が中心であるため、取引算定方法だけでなく、取引の実態や価格の決定方法も不透明です。カーボンオフセットの拡充には、市場取引が可能なクレジットを発行し、透明性を向上させることが重要です。
・消費者の賛同を得にくい
CO2は目に見えないため、クレジットがどの程度温室効果ガス削減に貢献できたのか見えづらく、また仕組みもわかりづらいため、消費者の賛同が得にくい場合があります。この問題の解決には、環境への貢献度を可視化できる仕組みが必要になります。
まとめ
本連載では、SDGs実現のカギとなるカーボンオフセットについて、そのメリットや事例、そして個人からでもできることを紹介しました。
企業や自治体ではすでに積極的に行われているカーボンオフセットですが、その仕組みの難しさから、まだ国内では十分に浸透しているとは言い難い状況にあります。
今後、カーボンオフセットに参加する人が増えれば、私たちの地球環境に対する意識も大きく変わるのかもしれませんね。
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