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生分解性プラスチック

生分解性プラスチックとは?わかりやすく解説

環境にやさしいプラスチック素材の研究が進められており、その中でも通常のプラスチックと同様の耐久性を持ち、使用後は自然界に存在する微生物の働きで最終的にCO2と水にまで完全に分解される「生分解性プラスチック」について紹介します。

安価で加工しやすく、寸法安定性が高いプラスチック製品は、私たちの生活に欠かせない素材です。

その生産は1960年代から2019年までで約20倍の4億トン/年、さらに20年後にはさらに2倍の生産予測がされ、プラスチック製品の回収や廃棄先が大きな課題となっています。リサイクルされているプラスチックは全体のわずか10%弱程度で、回収されたプラスチックごみの約80%が埋め立てや海などの自然界へ投棄されています。

このままでは2050年までに海洋中のプラスチックが魚の重量を上回ると言われており、海洋プラスチックごみ問題の解決に向けては、生分解性機能を有することが望ましいと考えられています。

生分解性プラスチック

生分解プラスチック」とは、プラスチック材料が単に分解されることではなく、自然界に存在する微生物の働きで分子レベルにまで分解し、最終的には水と二酸化炭素として自然界へと循環していくプラスチックのことをいいます。生分解プラスチックの生分解度は、国際的に規定された試験方法と、定められた基準で審査されます。加えて、重金属等の含有物、分解過程(分解中間物)での安全性などの基準をクリアした製品だけが、生分解性プラマークをつけることができます。

生分解性プラスチックの原料

現在、我が国で普及している生分解性プラスチックの約7割はバイオマス由来で、生分解性プラスチックを構成する元素は、炭素(C)・水素(H)、酸素(O)です。その他の生分解性プラスチックは、化石資源由来のナフサを主な原料として製造されています。
製法には、発酵法と化学合成法があり、最終的には水(H2O)と二酸化炭素(CO2)に100%分解されます。

生分解性プラスチックの特徴

生分解性プラスチックは、微生物の働きによって分子レベルまで分解され最終的には水と二酸化炭素となって自然界へ還っていきます。そのため、ごみとして蓄積されません。同様に、海で分解される生分解性プラスチックであれば、海洋プラスチックごみ問題の対策になり、あらゆる環境下でのプラスチックごみ問題の直接的な解決につながります。

ただし、生分解性プラスチックは樹脂ごとに分解する温度、分解に要する時間などが異なりますので、生分解性を発揮するためには、工業コンポスト、家庭コンポスト、土壌、海洋等の様々な分解環境に適した生分解性プラスチックを選択するよう留意することやプラスチックの種類や添加剤などの構成要素が適切な生分解性を備えていることが必要となってきます。

生分解性プラスチックの分解にかかる時間は?

WWFジャパンによると、通常のプラスチックが自然分解される時間は、一番分解されやすい「吸い殻」でも1.5年〜10年、身近なペットボトルでは400年、釣り糸に至っては自然分解されるのに600年もの膨大な時間がかかります。ところが生分解性プラスチックの分解にかかる時間は、レジ袋サイズでおおよそ3ヶ月から6ヶ月と言われています。分解に数百年かかると言われる通常のプラスチックよりも圧倒的に短い時間で分解が可能となります。

そして、生分解の速度は温度・湿度・微生物の影響でも変化します。有機性廃棄物と共に大型堆肥化装置に投入すると、短期間で生分解するように設計されています。

生分解性プラスチックの問題点・今後の課題

良いことづくめに聞こえる生分解性プラスチックですが、問題点もあります。

生分解性プラスチックは、研究開発や従来のプラスチックよりも生産に手間がかかるためどうしても高価になってしまい、2020年の時点で100%バイオマス由来のPHA系プラスチックの価格は、従来のPPやPEと比較すると2倍程度とされます。生分解性プラスチック普及へのネックとなっているのが、このコスト問題です。今後技術革新や量産化が進み、将来的には価格が下がることが期待されています。

また、生分解性プラスチックは、適切な環境下であってもすぐに分解されるわけではありません。完全に分解されるまでに年月を要するものがあり、状況にも左右されます。また、生分解性プラスチックは分解しやすい性質ゆえに再生樹脂として再利用するには不向きであるため、将来的に海洋生分解性プラスチックの流通が相当程度拡大した場合には、非分解性プラスチックと混合されて回収されることにより現行のリサイクルシステムに影響を与える可能性があります。また、使い捨てが前提となるため、ごみを減らす取り組みを表す「3R」のうち、「Reuse(リユース=使えるものは繰り返し使う)」と「Recycle(リサイクル=再資源化)」には適さず、従来のプラスチックと生分解性プラスチックの分別回収への啓蒙と実施とともに、両素材を分離回収できる技術開発なども今後の課題となっています。

生分解性プラスチックの用途例

便利で安価なプラスチックの使用量が増えている現代社会において、農林水産業用の資材や、土木・建築資材といった野外で継続的に設置したり、利用されるものについては、生分解性プラスチックの普及で廃棄物の削減につながると考えられています。また、食品包装用のフィルムや容器のような使用後の回収が困難な製品であっても、もし自然環境中に流出しても、生分解性プラスチックで作られた容器であれば環境破壊への影響は少ないと期待されています。

ここでは具体的にどのような製品に使用できるか紹介します。

【生分解性プラスチックの用途例①】農業や土木資材、生ごみ収集袋

農林水産業用資材・土木・建築資材などの自然環境下で利用する製品として、

・農林水産業用資材:マルチフィルム、移植用苗ポット、釣り糸、漁網、燻蒸フィルム、獣害対策忌避ネット等
・土木・建設資材:断熱材、山間や海中における回収困難な工事用の型枠・土留め
・野外レジャー製品:ゴルフ、釣り、マリンスポーツ、登山などのディスポーザブル製品

などがあります。

農業用資材として使用される「マルチフィルム」は、通常、作物の収穫後に回収・処理を行なう必要がありますが、生分解性プラスチックを素材としたものを利用することでその作業が不要になり、作物収穫後そのマルチフィルムを土に漉き込むだけで農作業の簡略化が期待されます。しかし、2019年の農林水産省生産局の調査によると、普及率はわずか6%程度にとどまっており、費用が割高であることや分解の時期が不安定であることが課題とされています。

生ごみを生分解性プラスチックの収集袋で回収、堆肥化・ガス化することにより、生ごみは堆肥やメタンガスに再資源され、収集袋は生分解されるため、廃棄物の大幅な削減に繋がります。

【生分解性プラスチックの用途例②】食品容器の包装

・食品容器包装:ティーバッグ、カトラリー・ストロー、食品トレイ、レジ袋、商品包装用のフィルム、スプーン・フォークなど
スーパーやコンビニで見かけるレジ袋やトレイ、ストロー、スプーン・フォークなどに、生分解性プラスチックが使用されていることがあります。上記の分類のほかには、
・医療用品:縫合糸や高度な医療用具
・衛生用品:紙オムツや生理用品など

にも応用されています。特に使用後の回収や再利用が困難な衛生用品の分野では、生分解性プラスチックの特性が活かされています。日々大量に使用されるものなので、プラスチックごみの量を減らす取り組みとして期待されています。

まとめ

プラスチックは加工の容易さやコストの安さなどから、私たちの生活に欠かせない素材となっています。そのため、大量のごみ問題に晒されており、環境に配慮した新しいプラスチックが求められています。しかし、プラスチックごみ問題の解決には、これから出るプラスチックごみを減らす対策と、すでに存在するプラスチックごみを減らす対策の両方が不可欠です。

環境配慮の3R、すなわち、使用済みになったものが、なるべくごみとして廃棄されることが少なくなるように製造・加工・販売するReduce:リデュース、もう一度使えるものはごみとして廃棄しないで再使用するReuse:リユース、廃棄されたものでも、再生資源として再生利用するRecycle:リサイクルに加え、プラスチックの利用を断るRefuse:リフューズの4Rも同時に意識しながら環境配慮型の新たな豊かさを構築していくことが必要となっています。

▶︎バイオプラスチックはこちら

▶︎4R─Refuse(リフューズ)、Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)はこちら

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