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CSA

CSAって?農業形態を詳しく解説

CSA(地域支援型農業:Community Supported Agriculture)とは、農家と消費者である地域住民が支えあいながら営農する「地産地消」の経営手法のこと。農家が抱える経営上のリスクを共有することで、契約を通じて相互に支え合うことが可能になります。

CSAのはじまり

CSAは、1980年代後半ごろにアメリカ北東部の農場で始まり、その後、欧米を中心に世界的に拡がりました。一説によると、日本で1960年代に始まった「産直提携農業」(生協などが野菜を農家から直接購入するシステム)がベースになっているともいわれています。

CSA(地域支援型農業)の目的

CSAの目的は主に3つあります。

1つ目は、生産者と消費者の間の絆を強め、地域コミュニティを活性化させること。CSAでは、消費者が収穫作業などに従事することで農家と直接ふれあいます。そのため、地産地消に対する意識を醸成できるほか、子どもたちに地域に根ざした食育の機会も提供できます。

2つ目は、小規模農家の経営を保護すること。近年は、グローバル化に伴う輸入品の流入により、小規模農業の経営が困難になっています。また、コロナ禍以降は、飲食店に野菜を卸していた小規模農家の収入が減少し、窮地に立たされている農家も少なくありません。こういった状況下で、地域住民が農業に直接参加することで、地域の小規模農家を労働面・経営面双方からサポートできるのです。

3つめは、地域住民に、将来にわたる土地利用について考える機会を与えること。従来の農業では、経済効率を優先するあまり化学肥料や農薬が大量に使用され、地域の生態系や環境への影響が懸念されていました。一方、CSAは大半がオーガニック栽培のため、地域の土壌に悪影響を及ぼさずに栽培が可能なのです。

CSA(地域支援型農業)の仕組み

CSAの仕組みは、いわば「農業版のサブスクリプションサービス」。消費者は生産者に対して農作物の代金費用を前払いし、生産者は、消費者から獲得した資金をもとに作物を育て、できたものを契約者に分配します。

収穫量が多ければ消費者にも多く還元でき、収穫量が少なければ消費者への還元量も少なくなります。このように、生産者のリスクを消費者が共有することによって、生産者は作付け前に安定した売り先を確保でき、安心して農作業に専念できるのです。

なお、産地直送の場合は、出荷後の代金決済や遠隔地への出荷を行っているため、CSAとは区別されます。

国内のCSA(地域支援型農業)の具体例

さまざまなメリットがあるCSAですが、残念ながら日本国内ではまだ定着していません。

理由としては、前払いへの心理的ハードルの高さや、消費者とリスクを共有することへの不安が挙げられます。特に、日本人の場合、リスクの共有という考え方が一般的でないため、リスク共有の概念が浸透しない限り、新たな参加者を募ることは難しいでしょう。

しかし、わずかとはいえ、国内でも実践事例は増加しています。以下では、北海道、宮城県、兵庫県の事例を紹介します。

「メノビレッジ長沼」(北海道夕張市)

「メノビレッジ長沼」は、1996年にCSAをスタートさせた国内CSAの第一号。創設者のレイモンド・エップさんは、アメリカでCSA農場を運営していました。生産者は、18ヘクタールの広大な水田や畑で、約30種の野菜類、小麦、豆類などを栽培しているほか、パンなどの加工品も製造・販売しています。また、消費者は、約80軒が会員となり、農業の共同経営者として地域の農業をサポート。田植えや草取り、稲刈り、ハロウィンの装飾品づくりなど、年間を通じて農業体験ができ、地域コミュニティの活性化にも貢献しています。

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出典:メノビレッジ長沼

「鳴子の米プロジェクト」(宮城県大崎市)

「鳴子の米プロジェクト」は、鳴子温泉の中山間地域の農業経営を立て直すため、2006年に始まったCSA。農家のみならず、観光関係者や企業や直売所も参加し、2008年にはNPO法人になりました。なお、もともとは山間寒冷地に向く良質米「ゆきむすび」の開発がきっかけで地域ぐるみのCSAに発展しています。本プロジェクトの特徴は、消費者が米一俵24,000円という値段で米を購入していること。作物を高く安定した金額で買い支えることで、農家の安定した経営を実現しています。

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出典:鳴子の米プロジェクト

「ビオクリエイターズ」(兵庫県神戸市)

「ビオクリエイターズ」は、神戸市西区を拠点とする有機農家グループ。育児世代でもある新規就農者の暮らしを安定させ、離農を防ぐことを目的に、2016年からCSAを開始しました。本プロジェクトでは、野菜のほか、クラフトビール用のホップを育てたりもしています。ちなみに2018年のメンバーは6人で、そのうち4人が就農5年以内の新規就農者。若手たちによる活気あふれる農業集団です。

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出典:ビオクリエイターズ

CSA(地域支援型農業)のメリット・デメリット

農家や地域に多大な恩恵を与えるCSA。しかし、中にはデメリットも少なからずあります。本章では、CSAのメリットとデメリットについて、生産者・消費者・地域の3点から分かりやすく説明します。

CSA(地域支援型農業)のメリット

生産者にとっての最大のメリットは、前払いの仕組みにより収入が不安定になるリスクを減らせることでしょう。さらに、消費者からの資金が増えれば、中間流通コストを抑え、高品質の作物の生産を目指せるほか、市場出荷では規格外とされる作物も無駄なく消費者のもとに直接届けられるため、作物の廃棄量削減にも貢献できます。

消費者にとってのメリットは、顔が見える農家からスーパーマーケットでは買えない安心・安全のオーガニック作物を定期的に購入できることや、配送時間のかかる大規模流通よりも短い時間で、新鮮な農作物を味わえること、子どもに食育の機会を提供できることなどがあります。

地域にとってのメリットは、消費者と生産者の絆を強め、新たな地域コミュニティを創出し活性化できること、消費者の払う代金が直接農家に届くため、地域内での資金循環が高まることなどが挙げられます。また、輸送に伴う二酸化炭素の排出量も削減できるため、環境負荷の低減にも貢献できるでしょう。

CSA(地域支援型農業)のデメリット

CSAの一番大きいデメリットは、消費者の需要と生産者の供給のバランスが必ずしも一致するわけではないことでしょう。

生産者の場合、豊作だと作物が売れ残ってしまう可能性がありますし、消費者の場合は、不作のときに払った額に見合った収穫量が得られない場合があります。

また、CSAの実現にはマーケティングや集金、営業などの煩雑な事務作業が必要になります。そのため、これらの工程を行う時間と人員を新たに捻出する必要がありますが、こういった作業に見合った収益が上げられるかは保証できません。

CSA(地域支援型農業)のはじめ方

CSAの開始には、以下の4つのポイントがあります。

1つ目は、販売時期。販売は通年ではなく、収穫時期の春や秋をメインシーズンとしましょう。

2つ目は、作物の分配方法。郵送や宅配のほか、消費者が自ら引き取るセルフ方式もあります。セルフ方式の場合は、作物の配布場所を確保する必要があります。

3つ目は、価格の設定。価格は、収量の見込みから割り出した単価から検討しましょう。なお、「鳴子の米プロジェクト」のように、一般的な価格にとらわれず、収益を上げられる金額を設定することが大切です。

4つ目は、会員の募集。はじめは、顧客や知人、友人など、すでに持っている人脈から会員集めをはじめましょう。

なお、CSAを運営する上でもっとも重要なのが、どんな農場を目指すのか、コンセプトをはっきりさせることです。加えて、農場は生産者・消費者双方に利益となるような形態を模索しなければなりません。地域の小規模農家を守りたいのか、消費者に新鮮な野菜を提供したいのか、しっかりとコンセプトを決めてからはじめましょう。

また、CSAは、生産者の取り組みに賛同する消費者の協力あってのものです。会員が集まった後も定期的に交流会を設け、コミュニティを継続的に盛り上げていきましょう。

まとめ

本記事では、近年世界的に注目を集めているCSA(地域支援型農業)について説明しました。CSAが定着すれば、生産者と消費者に利益をもたらし、地域コミュニティの活性化にもつながる「三方よし」のプロジェクトになることは間違いないでしょう。

しかし、日本国内ではサポート不足の問題などから、あまり浸透していないのが現状です。解決には、CSAの認知度を向上し、国全体で議論していく必要があるのかもしれません。

なお、農林水産省や国土交通省では、CSAの認知度の向上や課題解決に向けた情報発信を行っています。気になる方は、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。

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