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リグニン

リグニンとは?

「リグニン」とは、植物細胞壁の主要な構成要素の1つであり、植物が自己支持するために必要な構造的強度を提供する重要なポリマーです。リグニンは、セルロースやヘミセルロースと並んで、植物の細胞壁を形成する3つの主要な化合物のうちの1つです。

「リグニン」とは?簡単に解説

リグニンは、植物の主要な成分の一つで、植物に強度を与える化合物で、植物が立ち上がり高く育ったり、枝や葉を支えたりするのに重要な役割を持っています。

化学的には、芳香環を有する多価アルコールで、分子量は数千から数万の不均一性の高い高分子化合物です。

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自然界のリグニン

リグニンは植物を構成する3大成分のうちの一つです。木を化学的な成分ごとに分類すると、セルロースが40%程度を占め、残りはヘミセルロースとリグニンで構成されています。

上記の3大成分にはそれぞれ異なった役割があり、リグニンは植物に強度を与える成分だと考えられています。木の組織構造はよく鉄筋コンクリートに例えられ、セルロースが鉄筋だとすればリグニンはその間を埋め、強度を与えるコンクリートの役割をしていると言われます。その他にも、抗菌性や難燃性があるとも考えられており、植物の身を守るために役に立っています。

自然界では、セルロースに次いで存在量が多い高分子化合物であり、植物の中では二酸化炭素から糖を経由して合成されます。リグニンの多くは植物の細胞と細胞の間に存在し、ヘミセルロースと結合しています。そして、ヘミセルロースを介してセルロースと相互作用しています。リグニンはセルロースやヘミセルロースと比較して分解されにくいとされますが、キノコなどの白色腐朽菌によって分解されることが知られています。白色腐朽菌が存在しなかった時代の植物中のリグニンが、現在の石炭のもとになったと考えられています。

リグニンの穏和分解技術 | 京都大学 中村正治教授

リグニンの化学構造の特徴

リグニンは、セルロース、ヘミセルロースとは大きく異なる化学的な構造を持ちます。セルロースとヘミセルロースは多糖類に分類され、単糖が連なった構造をしています。一方で、リグニンは主に芳香環と呼ばれる構造がいくつも結合した高分子化合物であり、糖類の構造は持ちません。また、セルロースは、同じ糖類が連続で結合した構造で、均一性の高い高分子化合物ですが、リグニンは構造の多様性が高く、不均一な構造であり、植物の種類や部位によっても構造は異なります。リグニンに含まれる芳香環の種類は3種類が知られており、芳香環同士も様々な結合で繋がっているため、不均一で複雑な構造の高分子化合物になります。その構造の複雑さから、現在も正確な化学構造は分かっていません。針葉樹、広葉樹、草本類の順にリグニンの構造はより不均一になります。植物は進化の過程で、リグニンの多様性を高めることで、新しい能力を獲得してきました。分析手法の進歩とともにリグニンの構造も徐々に明らかにされつつあります。近年でも、リグニンの構造についての新しい研究結果が報告されています。

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リグニン由来物質の工業的な利用

製紙パルプ産業の副産物である、リグニンスルホン酸やクラフトリグニンなどの工業リグニンが知られています。工業リグニンは、天然のリグニンの化学構造が変化した、変性リグニンの一種です。紙の原料であるパルプを作るためには、木からヘミセルロースとリグニンを取り除き、セルロースの純度を高める必要があります。そのために、木に対してアルカリや酸等による化学的な処理で、リグニンを分解します。ここで分離されるリグニンが工業リグニンです。工業リグニンは、分離の過程で構造が変わっているため、化学的には天然のリグニンとは大きく異なる物質です。現在、工業リグニンのほとんどは紙を生産するための燃料として使われています。リグニンの利用例は少ないとみなされていますが、リグニンスルホン酸は、分散剤やコンクリート混和剤などの用途に使われています。

リグニンの新しい活用 | 京都大学 片平正人教授

新しいリグニンの用途の開発

世界に豊富に存在するリグニンのマテリアルとしての利用が期待されています。工業リグニンの材料としての利用や、リグニンを分解した低分子芳香族化合物の基礎化学原料やバイオ燃料への利用などが研究されています。樹脂への添加剤や、接着剤としての用途で、リグニンの機能が明らかになってきました。その他にも、新しい変性リグニンの分離方法が研究されています。天然リグニンを分離する過程で、リグニンの化学構造は変化し、分離した変性リグニンの構造は、分離方法や樹種によって異なります。そのため、リグニンをマテリアル利用しやすい形で分離することができれば、新しい天然由来の材料として有効利用することができます。日本でも新しい変性リグニンの開発が進められており、リグノフェノールやグリコールリグニンといった新しい変性リグニンの研究開発が行われています。その他にも、多糖の酵素分解の過程で分離される変性リグニンや、溶剤や酸で溶出するオルガノソルブリグニンなど、様々な変性リグニンが知られています。

リグニンの素材としての利用は発展途上ですが、石油や石炭を代替する資源として自然界で大量に生産されるリグニンへの関心は高まっており、今後の展開が期待されます。

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