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ケミカルリサイクル

ケミカルリサイクルとは?

現在、地球温暖化や環境問題が深刻化しています。このような社会環境下で、私たちは持続可能な社会を実現するために、循環型社会の実現が不可欠であると考えられています。その中でも、廃棄物の再利用に注目が集まっており、ケミカルリサイクルはその一つの手段として注目されています。ケミカルリサイクルにより、再利用可能な原料や化学物質を取り出すことができ、資源の有効活用や廃棄物削減につながるとされています。しかし、ケミカルリサイクルには技術的な課題やコストなどの問題もあるため、改善が必要であるとされています。本記事では、ケミカルリサイクルについて詳しく解説し、そのメリットやデメリット、現状や今後の展望について紹介していきます。

ケミカルリサイクルとは?わかりやすく解説

ケミカルリサイクルとは、使用済みの資源を化学的(chemical)に分解し、原料に変えてリサイクルする方法です。従来のリサイクルよりも多くの資源を再利用することができ、この方法により、資源の有効活用ができ、廃棄物の発生量を減らすことができると言われています。ケミカルリサイクルは、主にプラスチックや紙、布などの一般廃棄物に適用され、世界中で研究や開発が進められています。技術的な課題やコストの問題もあるものの、持続可能な社会を実現するためには、ケミカルリサイクルは有望な手段の一つであるとされています。

ケミカルリサイクル

身近なケミカルリサイクルには、以下のようなものがあります。

コークス高炉原料化:コークス炉は、空気を遮断して石炭を加熱し、コークス(石炭を乾留して炭素のみ残した燃料)を製造する設備のこと。高炉は火を燃やしておく場所のことで、コークス高炉原料化はプラスチックを石炭の代替品として利用する技術を指します。
コークス炉内部には両側の燃焼室から間接加熱される炭化室という空間があり、投入されたプラスチックは燃焼することなく熱分解されます。熱分解されたプラスチックは炭化水素油やコークス炉ガス、コークスとなり、生成されます。

ガス化:プラスチックごみなどを燃やしてガス化(気体化)する手法です。プラスチックを燃やすと、二酸化炭素と水素が発生します。回収した二酸化炭素は炭酸飲料やドライアイスなどに、また水素は主にアンモニアの原料として再利用されます。

油化:使用済み資源を熱分解し、生成油を製造する手法です。プラスチックの場合は、まず脱塩素機で塩素分を除去します。そして、残りの炭化水素を熱分解すると生成油(炭化水素油)ができます。生成油には軽質油・中質油・重油の3種類があり、途中で取り除かれた塩素分は、塩酸として回収されます。

原料・モノマー化:化学反応を利用して資源を分子(モノマー)まで分解し、それを原料として再び製品に利用する手法です。使用済みのペットボトルをモノマー化し、新しいペットボトルに作り直すケースなどが該当します。以前は使用済みペットボトルから新たなペットボトルを再生するのは難しいとされていましたが、今日ではモノマー化技術の進化によって、原油から作るペットボトルと同等の品質を実現できるようになりました。

バイオガス化:バイオガスは、微生物の力を使ったメタン発酵によって発生するガスのこと。このガスには「メタン」という燃えやすい気体が含まれており、発電にも利用できます。このメタン発酵をさせるため、微生物に与える「えさ」となるのが、家畜により排泄された糞尿や生ごみなどです。

これらのケミカルリサイクルにより、再利用可能な資源を取り出し、資源の有効活用や廃棄物削減につながっています。

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ケミカルリサイクル製品内訳 令和4年度(出典:日本容器包装リサイクル協会)

ケミカルリサイクルの種類

ケミカルリサイクルには、以下のような種類があります。

分解型ケミカルリサイクル: 製品や材料を化学的に分解して、元の状態に近い原料や化学物質に変換すること。

耐用型ケミカルリサイクル: 製品や材料を化学的に分解することなく、そのまま再利用すること。たとえば、プラスチック製品を再利用する場合、プラスチックの種類によっては、加工温度を下げることで再利用することができる。

エネルギー回収型ケミカルリサイクル: 製品や材料を燃やして、発生した熱エネルギーを回収することで、エネルギー源として利用すること。

バイオマス型ケミカルリサイクル: 植物や動物性廃棄物などのバイオマスを利用して、原料や化学物質を製造すること。

これらの種類によって、ケミカルリサイクルの方法や目的が異なります。

ケミカルリサイクルとマテリアルリサイクルの違い

「ケミカルリサイクル」と「マテリアルリサイクル」は、両方とも廃棄物を再利用することを目的としていますが、その方法や対象とする素材が異なります。代表的な「ケミカルリサイクル」「マテリアルリサイクル」「サーマルリサイクル」の違いについて見ていきましょう。

1:マテリアルリサイクル
マテリアルリサイクルとは、廃プラスチックを原材料にして再度プラスチック製品として利用することです。
分別されたプラスチックは事業者が回収し、粉砕・貯蔵・混合・溶融・成型を経て製品になります。この際、異物が除去されていなければ再利用できません。再生加工品は、コンテナ、ベンチ、フェンス、遊具、土木シートなど様々なものに再利用されます。

2:ケミカルリサイクル
ケミカルリサイクルとは、廃プラスチックを化学的な処理をして分解し、原料にしてから再利用することです。
ケミカルリサイクルのリサイクル方法は、5つあります。「元の素材に戻して再度プラスチック製品」になる『原料・モノマー化』、「石油などの燃料」になる『油化』、「水素・アンモニア」になる『ガス化』、「製鉄所で使用する還元剤」になる『コークス炉化学原料化』、「銑鉄」になる『高炉原料化』があります。

3:サーマルリサイクル
サーマルリサイクルとは、廃プラスチックをガスや油などの固形燃料にしたり、廃プラスチックを焼却した熱を発電などに使用することです。
サーマルリサイクルでは、分別しきれない廃棄物が処理されます。近年ではごみ発電が注目されており、プラスチックの高い発熱量から今後も有効活用が見込まれています。ごみ発電では、焼却しても有害物質を出さない仕組みになっています。

つまり、マテリアルリサイクルは、製品そのものを再生することに主眼が置かれ、素材を分別し、再生可能な素材を取り出すことが中心です。一方、ケミカルリサイクルは、製品や材料を分解して再生可能な原料や化学物質に変換することに主眼が置かれ、より高度な技術を必要とします。

ケミカルリサイクルのメリット・デメリット

ケミカルリサイクルのメリット

ケミカルリサイクルのメリットには、以下のようなものがあります。

資源の有効活用: ケミカルリサイクルにより、使用済み製品や廃棄物から再利用可能な原料や化学物質を取り出すことができるため、資源を有効活用することができます。

廃棄物削減: ケミカルリサイクルは、従来のリサイクルよりも多くの資源を再利用することができるため、廃棄物の発生を減らすことができます。

環境保護: ケミカルリサイクルにより、資源の有効活用や廃棄物削減に貢献することができ、環境保護につながります。

非再生可能資源の代替: ケミカルリサイクルにより、非再生可能資源の代替となる再生可能資源を作り出すことができます。

製品品質の向上: ケミカルリサイクルにより、再利用可能な原料や化学物質を製造することができ、製品品質の向上につながります。

これらのメリットにより、ケミカルリサイクルは、持続可能な社会の実現に向けて重要な手段の一つとされています。

ケミカルリサイクルのデメリット

ケミカルリサイクルのデメリットには、以下のようなものがあります。

技術的課題: ケミカルリサイクルは、製品や材料を化学的に分解することを必要とするため、高度な技術が必要となります。

コスト: ケミカルリサイクルは、高度な技術が必要であるため、従来のリサイクルよりも高コストとなることがあります。

プロセスの複雑性: ケミカルリサイクルは、プロセスが複雑であるため、実行するために高度な管理が必要となります。

純度の問題: ケミカルリサイクルによって生成される再利用可能な原料や化学物質には、元の材料に含まれていた不純物が残っている場合があります。このため、再利用可能な原料や化学物質の純度に問題が生じることがあります。

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2019年度東京23区清掃工場 ごみの中身(割合は全工場平均値)(出典:NPO法人 国際環境経済研究所)

ケミカルリサイクルの問題点・今後の課題

ケミカルリサイクルには、以下のような問題点や今後の課題があります。

技術的な課題: ケミカルリサイクルは、高度な技術が必要であるため、技術的な課題があります。特に、材料の分解や再生に必要な化学プロセスについては、改善や研究が必要とされています。

コストの問題: ケミカルリサイクルは、高度な技術が必要であるため、コストが高いことが問題とされています。特に、大規模なリサイクルプロセスを行う場合には、膨大な投資が必要となります。

品質の問題: ケミカルリサイクルによって生成される再利用可能な原料や化学物質の品質には、元の材料に含まれていた不純物が残っている場合があります。このため、再利用可能な原料や化学物質の品質が問題とされています。

資源の限界: ケミカルリサイクルにおいては、再生可能な資源の限界があります。特に、プラスチック製品のリサイクルには限界があり、今後は代替資源の開発が求められています。

規制の問題: ケミカルリサイクルには、製品や原料の規制が必要とされます。特に、再生可能な原料や化学物質の品質や安全性についての規制が必要とされています。

これらの問題点や課題を克服するためには、技術的な改善や規制の強化、代替資源の開発などが必要とされます。また、持続可能な社会の実現に向けて、ケミカルリサイクルは重要な手段の一つであるとされています。

まとめ

ケミカルリサイクルは、持続可能な社会を構築する鍵となる技術であり、地球環境保護と新たなビジネスチャンスの創出に注目が集まっています。

現在の技術的な課題や高いコストはあるものの、資源の有効活用と廃棄物の削減を通じて、継続的な技術革新や研究開発の進展により、より効率的で経済的なケミカルリサイクルの実現が期待されます。

ケミカルリサイクルにより、再生可能な原料や化学物質の生成、資源の限界を超えた循環型社会の実現が可能となり、地球規模の環境問題に対する前向きな解決策となるでしょう。

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